ドローンの安全な利用へ必要な基本の考え方として、鈴木氏は以下の4つを挙げる。
米国において、重さ250g以上のドローンは、ホビー用として使用する際にも登録義務対象となることが2015年に決定したという。鈴木氏は、250gという最低重量を決定した根拠として米国が示した計算を、リスクに対する考え方の一例になるとして紹介した。
250gのドローンが落下すると、空気抵抗なども考慮して約80ジュールの衝撃がある。80ジュールがどのような数値かというと、人間の頭に落ちた場合、31%の致死率であることが研究で分かっているという。
基本となる考え方にもあるように、鈴木氏は「危ないから、飛行を辞めろという話ではない」と指摘する。例えば、42.5m/秒の野球ボールが当たった場合の衝撃は127ジュール、76.0m/秒のゴルフボールは130ジュールだ。「ドローンだけ飛んでダメと言えない。どのくらいの被害が起こるかを算定することが重要」(鈴木氏)と語る。
1飛行時間当たりの致死率は、飛行時間当たりの故障率×落下エリアの人口×投影面積×暴露確率×致死率で求められる。米国では、100時間に1回の故障率、落下エリアの人口0.0039人/m2、投影面積0.02m2、暴露確率0.3、致死率0.3で計算。250gのドローン1飛行時間当たりの致死率は、4.7×10−8人になるとする。鈴木氏によると、4.7×10−8人は、軽飛行機が墜落して人が亡くなる確率よりもはるかに小さく、社会として許容できるとの判断から、米国では登録義務対象になる最低重量が250gと決められた。
日本では、2015年12月に航空法が改正され、人口集中地区や空港周辺、150m以上の高さの空域は、国土交通大臣の許可を受けた場合に飛行可能となった。夜間の飛行やイベント上空での飛行などにおいても、国土交通大臣の承認が必要となる。鈴木氏は「ある種の規制強化になるが、一方では、許可を得られたなら安心して飛行させることが可能となったため、ドローンを活用した業務が非常に活発となった」と語る。
このように国内でも法改正などが進みつつあるが、鈴木氏はドローンの安全な利用のために緊急に求められることについて、以下の3つを挙げた。
基本的な技能と知識と普及では、鈴木氏が理事長を務める日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が主催する認定スクールを紹介した。JUIDAでは、ドローンの安全な利用のためには操縦者の育成が重要と考えており、基準を満たす学校、企業などを教習スクールとして認定している。2016年11月現在、計38校の認定スクールが開校している。ライセンス取得者が全国で増加しているため、今後は地方自治体と協定を締結し、災害などの非常時に民間のドローンを活用する仕組み作りを進めていくという。
「危ないからドローンを使わないということでは技術が成長しないし、便利な道具を使いこなせなくなってしまう。安全な技術開発、さまざまなルール作り、利用する人の教育、こういった三位一体の取り組みが必要なのではないだろうか」(鈴木氏)
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