日本ナショナルインスツルメンツ(NI)は、2017年3月1〜3日に東京ビッグサイトで開催された「第7回 国際スマートグリッドEXPO」で、ポンプの予知保全システムを展示した。
IoTは1日にして成らず――。日本ナショナルインスツルメンツ(NI)で、シニアテクニカルマーケティングマネジャーを務める岡田一成氏は、こう強調する。
日本NIは、2017年3月1〜3日に東京ビッグサイトで開催された「第7回 国際スマートグリッドEXPO」で、ポンプの予知保全システムを展示した。この予知保全システムは、ポンプやバルブを扱うFlowserve、NIとPTC、Hewlett Packard Enterprise(HPE)、OSIsoftが、それぞれの得意分野で協業して開発したIIoTシステムである。
軸振動を計測する近接センサーや温度を測定するサーモカメラ、モーターの消費電力を計測するセンサーなどが搭載されており、ポンプの状態をオンラインで監視する。これらのセンサーから2.5Mバイト/秒でデータを取得し、NIのカスタム計測器「CompactRIO」と開発環境「LabVIEW」を用いて収集を行う。収集したデータはCompactRIO上で演算処理を行い(エッジコンピューティング)、HPEのサーバ「HPE Edgeline」上で動作するPTCのIoTプラットフォーム「ThingWorx」に80Kバイト/秒で出力する。ThingWorxでは、データの可視化や機械学習による故障予測などが行われる。
「機械学習はあくまでもツールである。故障した状態のデータを熟知したFlowserveと一緒に取り組んだことによって、予知保全システムが実現できた」(岡田氏)
また、AR(拡張現実)を用いてポンプシステム内部の状態をタブレット端末に表示したり、CADモデルとして表示したり管理担当者向けの作業支援環境を提供している。
従来は定期的な巡回検査が行われていたため、効率化する余地が多く残った上、昨今では検査を熟知したエンジニアの高齢化に伴う人手不足も課題になってきていた。予知保全システムにより、岡田氏は「モニタリングコストの低減だけでなく、本来時間を多く費やすべきである“データの分析”に集中することができる」と語る。
岡田氏によると、互換性のないバラバラに設置されたセンサーからビッグデータを取得するIIoTシステムでは、計測が特に重要になるという。CompactRIOは、電気的な信号を出すものは基本的に互換性を持つため、センサーの種類に関係なく制御可能である。さまざまなI/Oモジュールをそろえているため拡張性も高く、急なシステムの仕様変更にも柔軟に対応し、システム開発者の負担を軽減できるのが特長だ。
「IoTシステムは1日にして成らず。現場担当者を交えた故障モードの確認など現状把握から始めなければ、解析、手動、自動化といったステップに進むことができない。多くの企業は、自動化から始めようとする。故障モードが不明のままでは、そもそも何を計測すれば良いか分からず、予知保全を始めることができない。当社は計測器メーカーとして、現状把握からサポートを行う。今回展示したポンプ予知保全システムを、日本の産業界に貢献するIIoTシステムのシンボルとして紹介していきたい」(岡田氏)
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