産業技術総合研究所(産総研)先端半導体研究センターは、国内半導体製造装置メーカー3社と共同研究した成果に基づき、GAA構造のトランジスタを、300mmシリコンウエハー上に試作し、技術の検証などを行うことができる国内唯一の「共用パイロットライン」を構築した。
産業技術総合研究所(産総研)先端半導体研究センターは2025年11月、国内半導体製造装置メーカー3社と共同研究した成果に基づき、GAA(Gate All Around)構造のトランジスタを300mmシリコンウエハー上に試作し、技術の検証などができる国内唯一の「共用パイロットライン」を構築したと発表した。
最先端ロジック半導体向けトランジスタの構造はFin型から、多段の極薄膜シリコンチャネルをゲートで包むGAA構造への移行が進む。こうした立体構造を持つトランジスタを製造する工程は一段と複雑となり、高度なプロセス技術が求められている。ただ、最新のトランジスタを試作しても国内にはそれを検証/評価できる施設がなく、これまでは海外機関に頼らざるを得なかったという。
産総研先端半導体研究センターは今回、NEDOの助成事業である「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」における「先端半導体の前工程技術(More Moore技術)の開発」(2021〜2025年度、実施機関は東京エレクトロン、SCREENセミコンダクターソリューションズ、キヤノン)に対応した共同研究として、「先端3次元構造ロジック半導体デバイスの構造・プロセス技術の開発と検証用パイロットライン整備」に取り組んできた。
この中で、産総研スーパークリーンルームの300mmパイロットラインへ、産総研仕様に対応した最先端半導体製造装置を新たに16台導入し、GAA構造のトランジスタを試作できる共用パイロットラインを構築した。
これを実現するために必要となる要素プロセスも新たに開発した。「多段シリコンナノシートを形成するシリコン・シリコンゲルマニウム結晶膜成膜技術」「シリコンナノシート層のみを残してシリコンゲルマニウム層を選択エッチングする技術」「シリコンナノシートを囲むゲート絶縁膜とゲート金属電極を堆積させる成膜技術」「トランジスタのしきい値を制御するためのゲート絶縁膜厚と金属膜厚を精密に調整する原子層堆積(ALD)技術」などだ。
これらの要素プロセスは、東京エレクトロンやSCREENセミコンダクターソリューションズ、キヤノンらと個別に連携して開発した。これらのプロセスは、プロセスモジュールとして活用できるように整備し、全てのプロセスは産総研がそのノウハウを管理するという。パイロットラインは国内の企業や大学などに提供される。このため、利用者は最先端トランジスタの試作から技術の検証、動作の確認までを国内で実施できる。ようになる。
実験では、ゲート電極の断面電子顕微鏡画像によって、シリコンナノシートの周りをゲート絶縁膜とゲート電極が取り囲んでいる形状を確認した。また、ソース・チャネル・ドレインを横切る断面電子顕微鏡画像によって、シリコンナノシートがソース・ドレイン電極に正しく接続されていることが分かった。電気特性を評価したところ、ゲート電圧を印加するとドレイン電流がオンオフ制御される正常な電流電圧特性が得られていることも確認できた。
今後は、「ゲート電極の微細化」や「nチャネル型トランジスタとpチャネル型トランジスタによるCMOS化」「要素プロセスの高度化と拡充」などに取り組み、トランジスタの性能や信頼性の向上、低消費電力化などを可能にする技術を開発していくことにしている。
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