Appleは、長年にわたってグラフィックス技術を独自開発しているとうわさされていた。
Krewell氏は、「AppleのSoC『Aシリーズ』に搭載されるGPUは、PowerVRを修正する形で独自設計したロジックを適用してきたと考えられるが、ベースとなるPowerVRも、独自設計に置き換えられるレベルに達したのかもしれない」と述べている。
米国の技術分析会社であるReal World Technologiesでプレジデントを務めるDavid Kanter氏は、2016年10月に発表した自身の分析レポート「A Look Inside Apple's Custom GPU for the iPhone(Appleによる、iPhone用カスタムGPUに関する考察)」の中で、次のように述べている。
「Appleは数年前からグラフィック処理チップの設計者を採用し、独自のカスタムGPUを設計している。このカスタムGPUは既に、『iPhone 6』『iPhone 6s』『iPhone 7』に搭載されているSoC『A8』『A9』『A10』に採用されている。AppleのプロセッサのGPUにはまだ、PowerVRのハードウェア機能が部分的に残っている。だが、一般公開された情報によって、AppleのGPUのシェーダコアアーキテクチャは、PowerVRとは全く異なっていることが明らかになった。Appleは、同社のGPU向けに独自のMetal/OpenGL ESコンパイラを作成したと思われる。さらに、ドライバーも全て独自開発していることも、ほぼ間違いないだろう」
EE Timesは2016年9月に、「Imaginationは、iPhone 7から順次、iPhoneへのGPUの提供をやめる」といううわさを耳にした。このうわさは間違っていた。ImaginationのGPUコアは、iPhone 7にも搭載されている。
しかしわれわれは、過去2〜3年の間に、GPU IPベンダーであるVivante(2015年に中国のVeriSiliconが買収)から数人のGPU開発エンジニアがAppleに移籍したことを確認した。さらに、GPUコミュニティーから、「Appleはすさまじい勢いで、ImaginationからGPUエンジニアを引き抜き、Imaginationの本拠地である英国からAppleの本社のある米国カリフォルニア州クパチーノに転居させている」という情報も得た。
Krewell氏は2016年秋にEE Timesに対して、「AppleがVivanteからGPUの主任設計者を引き抜いたと聞いた」と語っていた。Vivanteは、Marvell Technology GroupとNXP SemiconductorsにGPU IPを提供している。
同氏は、「AppleがGPUを独自開発しているといううわさは、Raja Koduri氏がAMDからAppleに移籍した当時からあった(同氏はその後、AMDに復帰している)」と述べていた。
また、Imaginationの前CEOであるHossein Yassaie氏が突然辞職したことで、同社がトラブルに陥っているといううわさが広がった。市場は、新CEOの下、ImaginationのPRおよびマーケティング部門の従業員数が減っていることに危機感を抱いていた。
Imaginationの年次報告書によると、Appleのライセンス料は、2016年4月30日を末日とする年度において6070万ポンド(約83億円)だった。2017年4月30日を末日とする年度では、6500万ポンド(約89億円)に上るとみられている。
Imaginationによれば、同社は、ハイエンドスマートフォンでは50%のシェアを握っているものの、ミッドレンジの機種ではわずか7%にすぎないという。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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