ルネサス エレクトロニクスはHEV、EV用モーター向けに「100kW級インバーターソリューション」を開発した。同等出力のインバーターと比べ、最小クラスの容積を実現することが可能となる。
ルネサス エレクトロニクスは2017年4月、HEVやEV用のモーター向けに「100kW級インバーターソリューション」を開発したと発表した。大出力モーター向けインバーターとして最小クラスの容積を実現できるという。開発期間も従来に比べて半分に短縮することが可能である。
ルネサスが新たに提供するソリューションは、大型のHEVや中型までのEVなどに搭載されている最大100kW級/定格40kW級のモーター駆動を対象としている。出力電流は定格200Arms/最大500mArmsである。このキットにはマイコンやIGBT、FRD(Fast Recovery Diode)などの半導体チップと、モーターを最適に駆動させるための制御用ソフトウェア、モーターキャリブレーションツールなどが同梱されている。
IGBTは温度センサーを内蔵している。これによって高い精度と応答性に優れた温度管理を実現し、インバーターシステムに搭載するヒートシンクの小型、軽量化を可能とした。マイコンにはモーター制御のための専用回路「EMU(Enhanced Motor control Unit)」を内蔵している。DC-DCコンバーターやセカンドモーター、冷却ポンプなどを制御するため、別のECUで実行していた機能を取り込むことができ、車載ECUの統合化につながるという。これらの機能を搭載することにより、100kW級のインバーターを3.9リットル(突起部を除く)の容積で実現することができ、車両の狭い空間に実装することが可能となる。
このキットには、モーターの性能や効率をシステムレベルで最大化するためのキャリブレーションツールも同梱されている。試作したインバーターシステムを、速やかに実車で評価することも容易に行える。このため、これまで2〜3年も要していた試作開発の期間を1年に短縮することも可能になるという。
キットで提供される半導体チップは、電力損失などが小さいため車両の燃費/電費向上につながる可能性は高い。例えば、用意した低損失のIGBTモジュールを活用すると、電流損失は従来に比べて12%低減できるという。マイコン「RH850/C1H」は、モーター回転角度をアナログからデジタルに変換するRDC機能を内蔵し、高精度のモーター制御を可能とした。
この他、マイクロアイソレーター技術を内蔵したドライバーIC「R2A25110」は高速スイッチングを実現することができる。こうしたHEV、EVに特化した同社の車載用デバイスを活用することで、インバーターの損失を従来に比べて約10%も改善することが可能になるとみている。
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