AI(人工知能)機能を持つ組み込み機器の登場が、スマートな社会を身近なものとする。ルネサス エレクトロニクスはセキュアで自律的に動作する組み込み機器を開発するための「e-AIソリューション」を提案する。
ルネサス エレクトロニクスは、IoT(モノのインターネット)のエンドポイントであるさまざまな機器にAI(人工知能)を組み込む「e-AI(embedded-AI)ソリューション」を提供する。産業機器や家電製品、インフラ装置などが、AIを組み込むことで高度な知識や思考力を持ち、自律的に動く。同社はプライベートイベント「Renesas DevCon Japan 2017」会場で、15の応用例を具体的に示した。その中から2つの事例を紹介する。
同社は、スマートな社会を実現するために、「e-AI」をキーテクノロジーの1つとして掲げる。「e-AIは真のIoTを実現するために不可欠な技術」と話す。特に同社がフォーカスする事業領域である「ホーム」「ファクトリー」「インフラ」分野のスマート化に向けて、e-AIソリューションを提案していく。
スマートファクトリーの領域では、製造ラインに振動センサーとAIユニットを追加することで、モーターやベルトコンベヤーの振動によって生じる微小な信号から異常を検知して、予知保全を行うことができる事例を紹介した。モーターやベルトの振動をモニタリングするブロックでは、加速度センサーで収集した信号を、ハイエンドコントローラー「RZ/T1」内蔵のAIユニットでリアルタイムに処理し、動作の状態を判断する。
AI機能を用いることで、これまでは専門の保守作業者でも判別が難しかった初期の異常状態を生産現場で早期に検出することができる。このため、ベルトコンベヤーが故障して完全にラインが停止する前に、修理やメンテナンスを行うことができるという。しかも膨大なセンサーデータをクラウド側に送信する必要もない。
このシステムでは、ベルトコンベヤー上の物体を検出するデモも行った。デモでは自動車を想定し形状が異なる5種類の物体を用意。ベルトコンベヤーの上部に取り付けた変位センサーで、製造ラインを流れてくる物体の高さを上部から測定。事前に登録された車両の形状パターンと比較し、形状が一致しなければ「NG」としてエラー出力と表示を行う
スマートホームの領域では、生活用品にAI機能を組み込んだ事例を紹介した。循環器疾病予兆レファレンスキットは、心電と脈測定が可能である。モジュール基板は外形寸法が11×18mmと小さく、センサー部も含め電動歯ブラシや腕時計などにも容易に組み込むことが可能である。このため、個人の生体情報を24時間収集し、オフラインで管理することができるという。
モジュール基板には、マイコン「RX231」やリアルタイム解析用のミドルウェアが搭載されている。心電回路や脈波センサーで収集した微小なデータを用いて、脈波伝搬時間(血圧由来)をリアルタイムで演算することができる。また、24ビットΔΣ型A-Dコンバーター内蔵マイコンやワイヤレス通信、ワイヤレス給電のための機能なども実装されている。
このため、収集した心電波形や脈波の生データをBluetooth Low Energy(BLE)対応の無線システムで送信することもできる。端末機器側で血圧相関データなどを演算することができるため、送信するデータ量は最小限に抑えることができるという。
ルネサスは、循環器疾病予兆レファレンスキットに用いているマイコンや解析用ソフトウェア、回路図情報などをユーザーに提供していく。
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