中国で勝ち残るコツ、“ジャストフィットな仕様”を追求する:製品分解で探るアジアの新トレンド(17)(4/4 ページ)
Amlogicは、2010年以降多くのチップを作ってきた。早い時期からマルチコアCPUを採用し、クアッドコアやオクタコアを実現した1社である。図4に、Amlogicのプロセッサのヒストリーの一部を掲載する。「S802」では、多くのスマートフォンメーカーが、デュアルコアやクアッドコア程度のGPUコア数であった時期に、8コアのGPUをリリースした。
図4:減少し続けるコア数(クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート
しかしOTT/STBではそれほどのGPU性能を必要としないことから、2015年以降のチップではGPUコアの数を削減している。数多い半導体メーカーの中で、GPUコア数を減らしているのは、Amlogicくらいではないだろうか。
例えばSamsung Electronicsのスマートフォン「Galaxy S」シリーズを見てみよう。搭載されているGPUコア数は、世代が新しくなるにつれて、1、4、4、3、6、8、12、20(一度だけ減っている)と増加の一途をたどっている。最新のプロセッサではチップの4割から半分の面積がGPUに割かれているが、AmlogicのチップではGPUの面積比率は常にチップ全体の2割程度である。むしろ汎用性の高いCPUに重きを置いた構成になっているのだ。
こうした、市場にマッチした仕様こそが、ASSPチップとして中国市場シェアNO.1の地位を築く要因となったのだろう。OTT/STBの最大市場である中国で君臨するためのターンキーにもなっている。チップセットにはなっていないが、「Amlogic+汎用メモリ+汎用LANトランスフォーマ+Wi-Fi/Bluetoothチップ」という構成で完成しているOTTやSTBも多いからだ。
しかも多くのチップにありがちな、「帯に短し、たすきに長し」ではない、ちょうどよい仕様となっている。中国で売れるためには何が必要か、Amlogicの事例を今後も追い、観察していく予定だ。
“Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年に渡る半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。
百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。
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