先日、Appleの元上級SoC開発者がGoogleに転職していたことが分かった。Googleは現在、モバイルSoC(System on Chip)開発チームの増強に取り組んでいる。
Googleは2016年10月にスマートフォンの自社ブランド「Pixel」の販売を開始したが、それに搭載するSoCはQualcommから供給を受けていた。しかし、同社は現在モバイルSoC(System on Chip)開発チームの増強に取り組んでいる。ハードウェア部門に従事する人員を200人近く募集しており、そのうちの最低でも6人がモバイルSoCに特化した設計者の募集だ。
Googleが公開した求人リストによると、同社は少なくとも10年の実務経験を持つエンジニアを求めているようだ。また、モバイルSoCの物理的設計者に加えて、パッケージングやメモリの設計を手掛けるエンジニアも採用しようとしている。これらのポジションに就いた人たちは、米国カリフォルニア州マウンテンビューの本社に配属となる。一方、必ずしもスマートフォンやSoCに直接関わるわけではないが、ハードウェア関連のポジションの多くは、シカゴ、ムンバイ、上海、ストックホルム、台北など、世界中に点在する開発チームに配属される。
GoogleのモバイルSoCに対する新たな取り組みは、アメリカのメディア『Variety』によって明るみに出た。GoogleはPixelの発売と同時期に、Amazonの「Kindle」を開発したグループ「Lab126」を率いたDavid Foster氏を雇い入れたが、このたび声をかけたのはAppleの技術者だ。先日、Varietyの記者は、Appleの元上級SoC開発者であるManu Gulati氏のLinkedInへの投稿を見て、Googleが彼を引き抜いたことに気付いたようだ。Gulati氏はLinkedInのプロフィール欄で、Googleでの自身の仕事を「主席SoCアーキテクト」と述べている。
Varietyの記事によると、Gulati氏はApple時代に「iPad、iPhone、Apple TV向けのカスタムチップを開発する取り組みに参加していた」。そのため、同氏は「チップ関連の15件の特許」の共同開発者に名を連ねている。それらの特許には、Apple Pay向けのハードウェアベースのセキュリティ技術を定義したものも含まれる。
EE Timesはこのたび独自に取材を行い、Gulati氏のかつての同僚からコメントを得た。彼は2009年にGulati氏をAppleにリクルートした人物だ。このたび匿名を条件にEE Timesの取材に応じ、Gulati氏がAppleに入社した当初、バスやキャッシュの開発に注力していたことを語ってくれた。それと同時に、Gulati氏が2017年5月初旬にGoogleに入社したことを認めた。「GoogleがGulati氏を首席SoCアーキテクトとして雇ったことにはいささか驚いている」という。
元同僚によると、「近年、モバイルSoCの設計と製造には5億米ドル以上の費用がかかる。Googleのスマートフォン事業が、巨額のコストを正当化できるほど十分な収益を生み出しているかどうかは定かではない」という。その一方で、彼は「Googleがこのまま、Qualcommの『Snapdragon』を調達していたら、他社のスマートフォンとさして変わらないものを売り続けることになってしまう」とも述べた。
元同僚は続けて、「Appleは深い知識を備えた優秀なエンジニアを大量に抱えているため、Gulati氏の離脱によって大きな影響を受けることはないだろう。また、GoogleはこれまでにPixelを100万個程度しか販売していないので、Qualcommも大した打撃を受けないはずだ」と語っている。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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