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心を組み込まれた人工知能 〜人間の心理を数式化したマッチング技術Over the AI ―― AIの向こう側に(15)(8/13 ページ)

» 2017年09月21日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

VCGメカニズム

 では、Vickrey-Clarke-Groves(VCG)メカニズムを実施例で紹介します。

 具体例として、9月23日(土)と24日(日)の2日間、江端を自由に使える権利(江端をレンタルする権利)の入札を例にして説明を試みます。

 この例では、

  • "嫁さん"は、私に子ども部屋のリフォームをさせるために、丸一日働かせようと画策しています。そしてうまくいけば2日間抑えておきたいと思っていますが、取りあえず1日あれば大丈夫と踏んでいます。
  • "地元の姉"は、私を実家に帰省させて、両親の世話をしてもらいたいと考えています。姉は両日、都合で不在になるからです。取りあえず24日はソーシャルワーカーとの打ち合わせがあるので、強めに希望していますが、両日の対応を期待しています。
  • "会社の後輩"は、23日の特許明細書の締切のために、その日、丸一日手伝わせたいと思っています。24日は特にいなくても構いませんが、いたらいたで、別の仕事をやらせればいい、と画策しています。
  • "町内会長"は、週末の研修会に江端を出席させたいと考えています。両日出席しなければならないので、もし江端の都合がつかないなら、他の人間を派遣しようと思っています。

 さて、この条件でオークションをしたら、落札内容は一瞬で決まります。

 江端は、合計金額が最大値になるように、組み合わせを考えますので、23日は後輩を手伝い、24日は実家に帰省することで、2.7万円で落札することになります(以下、{9/23,9/24} = {"会社の後輩", "地元の姉"} と記載します)。それ以外に高額になる組み合わせがないからです。

 しかし、希望価格に対して、希望価格で落札しているので、誰もニンマリしてもうかった、という気持ちになれません。これでは、#1の「個人合理性」すら成りたっていない状態です。

 では、次のような状態ではどうでしょうか。

 この図では、上が下心の入札値で、下に本心の入札値が記載されています。この結果では、町内会長が落札します({9/23,9/24} = {"町内会長", "町内会長"})。が、これでも、町内会長は1000円を損した気分になった上に、誰も幸せになっていません。

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