"マッチング技術"についていろいろと調べてみたのですが、今回も2つほど、腰が抜けるほど驚いたことがあります。
第1に、"マッチング技術"に使われている論理が、「人間の心を完全に数式化した上で、論理の中に矛盾なく仕込まれている」という事実です。
「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている」(ガガガ文庫[小学館])の平塚先生のセリフ――『馬鹿者。感情が計算できるならとっくに電脳化されている。…計算できずに残った答え、それが人の気持ちというものだよ』――は、残念ながら正しくありません。"マッチング技術"では、感情は計算できていますし、とっくに電脳化されています。
第2に、特にSNSや街コン(後述)などのマッチング市場規模が、私の想像を絶するほど大きいことを知ったということと、この情報が、このITエンジニア兼研究員である私の耳には全然入ってこなかったという事実です。
では、ここで、マッチングの手段として使われている技術をざっくりご紹介します。
こうして見てみると、マッチングに使われている技術が、IT技術と強い関連性があるのが見て取れると思いますが、その中でも特に、「ゲーム理論」「オークション理論」「行動経済学」は、その理論の中に、人間の心理が、最初から数式、ロジックとして必須の構成要件として組み込まれている点において、極めて特異です。
ただし注意していただきたいのは、「プログラムに、人間の心理を数値化してアルゴリズムとして組み込むなんざ、やればできる簡単なことだ」という、そういう次元の話ではないという点です。
これは、第8回の「陰湿な人工知能 〜「ハズレ」の中から「マシな奴」を選ぶ」で、「囚人のジレンマ」の時にお話した、『人間がどんなに頑張っても、ナッシュ均衡に陥り、パレート最適に至ることができない』という次元の話です。つまり、「人間心理の王手(詰み)」みたいな感じの話なので、この辺りを誤解されないようにお願いします。
と、いうわけで、今回は、既にご紹介した「ゲーム理論」に加えて「オークション理論」「行動経済学」を加えて、"マッチング技術"という内容でまとめてみたいと思います。
以前、「ゲーム理論」をAI技術と言ってしまった以上、「オークション理論」も「行動経済学」も含めた「マッチング」もAI技術と言い張らないとバランスが悪いと思いますので、今回も『江端AIドクトリン』に基づいて、「"マッチング技術"はAI技術である」と、私が勝手に決めました。
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