今回は、強誘電体メモリに関する2つのシリーズ「強誘電体メモリの再発見」と「反強誘電体が起爆するDRAM革命」の要点をまとめる。2011年に二酸化ハフニウム強誘電体が公表されてからの研究成果を振り返るとともに、これからの課題についても触れておきたい。
今回は、これまで連載してきた2つのシリーズ、「強誘電体メモリの再発見」と「反強誘電体が起爆するDRAM革命」のまとめである。
Fraunhofer Institute、ドレスデン工科大学(TU Dresden)、NaMLabなどの共同研究グループが、二酸化ハフニウム(HfO2)に強誘電性を見いだしたのは約10年前、2007年のことだ。翌年の2008年には、DRAMメーカーであるQimondaの協力を得て、強誘電体トランジスタ(FeFET)を試作した(二酸化ハフニウムを使った強誘電体トランジスタの研究開発(前編))。
しかししばらくの間、彼らの研究活動とその成果は、公表されなかった。国際学会と学会論文で強誘電性二酸化ハフニウム(HfO2)の存在を公表したのは、発見から約4年後の2011年のことだ(新材料「二酸化ハフニウム」における強誘電性の発見)。
二酸化ハフニウム強誘電体を不揮発性メモリに応用する方法は主に2つある。1つは、1個のMOSFETと1個の強誘電体キャパシターでメモリセルを構成する方法。もう1つは、強誘電体をMOSFETのゲート絶縁膜に組み込むことで1個のトランジスタだけでメモリセルを構成する方法である。前者は「1T1Cセル」、後者は「1Tセル」と呼ばれる。後者のトランジスタを特に「強誘電体トランジスタ(FeFET)」と呼ぶ。
ドレスデン工科大学などの共同研究グループは、2012年には早くも、1T1Cタイプのメモリセルを想定した強誘電体キャパシターを試作して良好な特性を得た(新材料「二酸化ハフニウム」を使った強誘電体キャパシターの特性)。翌年(2013年)には、3次元構造の強誘電体キャパシターも作製している。
また2014年には、28nmと微細な製造技術を駆使して強誘電体トランジスタ(FeFET)を試作し、特性を評価した(二酸化ハフニウムを使った強誘電体トランジスタの研究開発(後編))。製造技術ではシリコンファウンドリーのGLOBALFOUNDRIESが協力した。
さらに2016年には、二酸化ハフニウムの分極ドメインを2個〜3個しか含まないFeFETを試作し、多値メモリに適用できることを示した(強誘電体トランジスタで多値メモリを実現する(前編))。
同年には、反強誘電体である二酸化ジルコニウム(ZrO2)のキャパシターを、電極の工夫によって強誘電体と同様に残留分極を持たせられるように変更して見せた(反強誘電体キャパシターから不揮発性メモリを作る方法)。さらに、二酸化ジルコニウムがDRAMキャパシターの絶縁膜と同じ材料であることから、不揮発性DRAMを実現可能であることを証明した(「不揮発性DRAM」へのアプローチ(後編))。
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