ロームは、ハイレゾリューション(ハイレゾ)音源対応のオーディオ機器向け電源IC「BD372xx」シリーズを開発した。
ロームは2018年3月、ハイレゾリューション(ハイレゾ)音源対応のオーディオ機器向け電源IC「BD372xx」シリーズを開発したと発表した。オーディオ機器用電源に要求される「電圧安定性」「ノイズレベル」「両電源の対称性」の全てで優れた特性を実現した。
BD372xxシリーズとして今回は、3製品を用意した。DSPやD-AコンバーターICなどデジタルICに向けた「BD37201NUX」、電流−電圧(I-V)変換アンプやアナログサウンドプロセッサなどアナログICに向けた正電源「BD37210MUV」と負電源「BD37215MUV」である。正電源と負電源を組み合わせて用いることで、理想的対称性を持つ電力供給を可能とする。
これらの製品は、独自のアナログ設計技術と音質設計技術を融合することで、高音質オーディオ機器で要求される3つの重要特性を、バランスよく達成した。同社は垂直統合型生産を行うIDMメーカーとしての強みを生かし、回路設計やICレイアウト、ウエハー形成プロセス、パッケージなどの工程において、音質に影響を与える28のパラメーターを特定、聴感評価によりこれらパラメーターを最適化したという。
重要な特性の1つは「電圧安定化」である。新製品は、広帯域で高速応答が可能なエラーアンプ回路を新たに開発して搭載した。これによって、入力電圧や出力電流に変動が生じた場合でも、出力電圧への影響を極めて小さくすることができるという。電源電圧除去比(PSRR)は、周波数が1kHz程度までフラットな特性を保ち、周波数範囲が10Hz〜1MHzにおいては50dB以上を実現した。
もう1つは「ノイズの極小化」である。低ノイズアーキテクチャーを採用し、IC内部から発生するノイズを極めて小さくした。さらに、ローパスフィルターの前段にノイズ源を設けることでノイズの増幅を抑える回路構成とした。従来品は260μV▽▽rsmあったノイズレベルを、新製品では4.6μVrsmにするなど、従来品と比べて約50分の1に抑えた。
3つ目は「両電源の対称化」である。正電源に加えて同一回路構成の負電源も用意した。この2つを組み合わせることで、特性面で理想的な対称性を持つ電源供給を実現した。これによって、音源の定位が明確となり、音空間の広がりを表現できるという。この他、ICチップとリードフレームを接続するボンディングワイヤーの材質も音質に影響を及ぼすことが分かり、今回はCu(銅)ワイヤーを用いた。
新製品は既にサンプル出荷を始めている。サンプル価格(税別)は2000円で、2018年6月より月産10万個体制で量産に入る。
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