Xilinxは2018年3月19日(米国時間)、7nmプロセスを用いる新たな製品群「ACAP」(エーキャップ)を発表した。新たなプログラマブル演算エンジンなどを搭載し、現行のFPGA製品よりも20倍高いAI(人工知能)演算性能を発揮するという。
Xilinxは2018年3月19日(米国時間)、7nmプロセスを用いる新たな製品群「ACAP」(エーキャップ)を発表した。プログラマブルロジック、複数種のプロセッサコアなどとともに、ビデオ処理やAI(人工知能)推論などの処理に適したプログラマブルな演算エンジン「HW/SWプログラマブルエンジン」と搭載するデバイス製品。Xilinxは、ACAPのAI演算性能は現行の16nmプロセス採用ハイエンドFPGA製品(Virtex VU9P)に比べ20倍に達するという。2018年中に設計開発を完了させ、2019年に製品出荷を開始する予定。
Xilinxは、今回発表したACAPを「従来FPGAの性能をはるかにしのぐ、全く新しい製品カテゴリー」と位置付ける。ACAPは、Adaptive Compute Acceleration Platform(=適応型演算プラットフォーム)の略で、開発コード名はEverest(エベレスト)。
ACAPの構成要素は、次世代プログラマブルロジックと、アプリケーションプロセッサ、リアルタイムプロセッサ、HBM、RF・A-D/D-Aコンバーター、最高112Gビット/秒対応のSerDes、プログラマブルI/Oなどであり、Xilinxが展開するFPGAにCPUコアを搭載しプログラマブルSoC(System on Chip)と位置付ける「Zynq」に似る。ACAPがZynqと異なる製品カテゴリーに位置付ける理由は、ACAPが動的に構成を変更できる演算エンジン「HW/SWプログラマブルエンジン」を搭載する点。「このHW/SWプログラマブルエンジンがACAPの最大の特長」(Xilinx 社長兼CEOのVictor Peng氏)という。
HW/SWプログラマブルエンジンは、処理負荷に応じてその構成をミリ秒単位で動的に最適化できるとし、ビデオの圧縮符号化、データ圧縮、検索、AI推論、ゲノミクス、マシンビジョンなどの幅広い用途のアクセラレーションで、その性能を発揮するという。16nm世代FPGA(Virtex VU9P)に比べ、ディープニューラルネットワークを実装した場合、20倍の性能向上が期待できるとする。また、第5世代移動通信(5G)のリモートラジオヘッドでは、16nm世代FPGAに比べ4倍の帯域幅に対応できるとする。Peng氏は「1W当たりの性能も、16nm世代FPGAの10倍以上になる」と高い電力効率を実現できるとの見通しを示した。
2018年1月に社長兼CEOに就任したPeng氏は、Xilinxを取り巻く市場のトレンドとして「データの爆発的増加」「AI時代の到来」「ムーアの法則後のコンピューティング」の3つを挙げ、それらのトレンドに対応するには「適応性のあるアクセラレーテッドコンピューティングが必要」とする。ACAPは、そうした“適応性のあるアクセラレーテッドコンピューティング”の提供を目指す新体制下のXilinxを象徴するデバイスになる。Peng氏は「ACAPの開発に、4年の年月を費やし、1500人のエンジニアが関わり、10億米ドル以上の研究開発費を投じている」としている。
ACAPは、TSMCの7nmプロセスラインで製造を行う方針で、Xilinxとして最初の7nmプロセス採用製品となる。既に一部の顧客に対しては、ソフトウェアツール(アーリーアクセス版)の提供を開始している。
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