中国は、半導体産業を強化すべく、既に技術を持っている海外企業を買収しようとしてきた。だが、特に米国で、そうした動きに対する警戒が強まる中、中国は海外企業の買収から、国内で全てまかなうという方向にシフトし始めているようだ。
世界半導体業界の“M&Aラッシュ”からつまはじきにされた中国は、その代わりに活気のあるエコシステムを独自に構築することを目指し始めた。この場合、エコシステムとは、設計、製造、材料、装置を含め、全てを国産でまかなうサプライチェーンのことを指す。
中国は、全てを自国で行えるほど大きい規模の市場があると自負しており、主要な半導体製造国になろうと果敢に挑んでいるようだ。とはいえ、同国の半導体の輸出入額の差は広がり続けている。国内半導体産業の急速な成長にもかかわらず、2017年の中国の半導体輸入額は2600億米ドルで、輸出額はわずか670億米ドルにとどまった。輸出入額の差は2016年の1660億米ドルから1930億米ドルに膨れ上がった。
Credit SuisseのバイスプレジデントであるRandy Abrams氏は、2018年3月14日から16日まで中国・上海で開催された展示会「SEMICON China」で、中国国内の半導体産業がいくらかの勢いを増していることを示すレポートを発表した。
SEMICON Chinaで行われた発表の多くは、高成長市場の創出を目指した、中国のエコシステムとより広範なグローバルコミュニティー内の協業について取り上げたものだった。中国にかけられた政治的圧力によって、今後は中国によるグローバルレベルでの大規模なM&AやIP(Intellectual Property)の買収は少なくなっていくとみられる。だが、Credit Suisseによると、中国はそのような圧力に屈することなく、ターゲットを小規模な企業や無名のジョイントベンチャーにシフトしながら、企業やIPの買収を推進していくことが見込まれるという。
Mentor GraphicsのCEO(最高経営責任者)であるWalden Rhines氏は、SEMICON Chinaで行った講演の中で、半導体業界の再編という考え方を否定し、中国の新興企業が情勢を作り変えているとの見方を示した。Rhines氏以外にも、同イベントには半導体サプライチェーンの多国籍企業のトップエグゼクティブたちが登壇したが、いずれも、中国が多数の製造施設を国中で建設していることが、極めて大きなビジネス機会をもたらすという見方を示していた。
中国は、ファーストラウンドとして、投資総額の86%に相当する1380億元(約2.3兆円)を、国家IC投資ファンドに投入している。Credit Suisseによると、セカンドラウンドでは、それよりも多額の1500億元を投資する計画を進めているという。中国は、地元のサプライヤーを設立することと、外資系企業に中国国内での製造と地元企業とのジョイントベンチャーの設立を促すことで、引き続き輸入代替に注力している。
中国にはIPが足りないが、中国政府がバックアップする企業が現在、3つの新しいメモリ製造工場建設を進めている。これらの工場は2018年内にも稼働を開始する予定だ。Fujian Jinhua Integrated Circuit(JHICC)とInnotron Memoryは、DRAMの製造を開始する予定となっていて、Yangtze Memory Technologies(YMTC)は、3D(3次元) NANDフラッシュメモリの製造を開始する予定だという。
YMTCは、32層のNANDフラッシュのサンプル出荷を開始しており、JHICCとInnotron Memoryは、22nmプロセスを適用したDRAMの開発を進めている。Credit Suisseが半導体製造装置メーカーを取材したところによれば、JHICCは歩留まりを向上させているようだ。JHICCの22nm DRAMは、Micron Technologyの20nm DRAMに近いという。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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