スマートホーム向けの照明システムの開発を手掛ける米Noon Homeは、IoTに機械学習を取り込むために、より安価なSoC(System on Chip)やDRAMの重要性を主張している。
スマートホーム向け照明システムの開発を手掛ける米国の新興企業Noon Homeは、IoT(モノのインターネット)に機械学習を取り込むには、より安価なSoC(System on Chip)やDRAMが必要であると主張している。同社は現在、ニューラルネットワークの導入を目指しているが、それを実現するには、低コストのチップが不可欠であるという。
Noon Homeのハードウェアエンジニアリング部門を率いるSaket Vora氏は、消費者市場に普及させるAI搭載IoT機器を開発するために、「価格(米ドル)が1桁台の部品が出てくることに期待している。というのも、AI(人工知能)アプリケーションは、大量のメモリ帯域幅を必要とするものばかりだからだ」と述べた。同氏はかつてAppleのエンジニアリングマネジャーとして、第1世代のApple Watchを担当した人物である。
社員55人の新興企業であるNoon Homeでは現在、クラウドサービスで従来の分析技術を使っているが、同社のデータサイエンスチームはAIの可能性を模索中だ。将来的には、プログラマブルな推論エンジンを搭載したSoCを照明コントローラーに内蔵し、家の中の人たちの動きをトラッキングできるようにすることを目指している。Vora氏によると、そのようなSoCは現在12〜15米ドルするが、消費者市場に貢献するには、5米ドル以下のSoCが必要だという。
DRAMのコストと可用性は、等しく大きな障壁である。AIアプリケーションを駆動するSoCには、およそ512Mバイトのメモリが必要だが、DRAMだけでも10〜12米ドルのコストが掛かる。これは、組み込みLinuxを動かすプロセッサの価格の2倍に相当するコストだ。その上、DRAMの供給は不足しており、価格も不安定だとVora氏は述べる。
問題は、膨大な市場規模を持つスマートフォンやサーバ市場が、メモリアーキテクチャ、価格、供給に大きく影響する点だ。一方、LPDDR2など、IoT設計に好んで使われるメモリは次世代規格へと移行が進んでいるため、駆け込み購入が増えているという。
IoT関連の有名な書籍の著者であり、Ciscoの戦略イノベーション部門でバイスプレジデントを務めるMaciej Kranz氏は、半導体業界がIoTで成功するには、システム設計者やエンドユーザーの要求に耳を傾ける必要があると述べた。
Kranz氏は「従来、チップメーカーはシステムベンダーと協力して要件を満たしてきた。だが、IoTという領域では、エンドカスタマーとも対話しなくてはならず、従来の戦略で成功できるとは限らない。限られたユースケースを基に、ユーザー要件の共通点を見つける必要がある」と述べた。
一方、Noon Homeは、第1世代の製品(199米ドルの照明制御器と99米ドルのスイッチ)を発売中だ。照明コントローラーは、Wi-Fiを介してホームルーターと同社のクラウドサービスにつながる他、Bluetoothでスイッチとペアリングできるという。
有機ELディスプレイのタッチスクリーンを備えた照明コントローラーには、いずれもSTMicroelectronicsの「Arm Cortex-M7」ベースのSoCと、ToF(Time of Flight)センサーが搭載されている。スイッチには、Microchip TechnologyのPICマイコンが採用されている。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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