シリコンフォトニクスの代表的な光変調器「マッハツェンダ変調器(MZ変調器)」と「リング変調器」の基本原理である、シリコン半導体中のキャリア密度によって屈折率が変わる様子を解説する。
半導体デバイス技術に関する国際会議「IEDM」では、カンファレンスの前々日に「チュートリアル(Tutorial)」と呼ぶ技術セミナーを開催している。2017年12月に開催されたIEDMでは、6件のチュートリアルが開催された。
その中から、シリコンフォトニクスに関する講座「Silicon Photonics for Next-Generation Optical Interconnects(次世代光接続に向けたシリコンフォトニクス)」が興味深かったので、その概要をシリーズでお届けしている。講演者は、ベルギーの研究開発機関imecのJoris Van Campenhout氏である。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
前回は、シリコンフォトニクスの代表的な光変調器である「マッハツェンダ変調器(MZ変調器)」と「リング変調器」、「電界吸収変調器(フランツケルディッシュ効果による変調器)」の原理と特徴を説明した。今回は、マッハツェンダ変調器とリング変調器の基本原理である、シリコン半導体中のキャリア密度によって屈折率が変わる様子を解説する。
シリコン半導体中のキャリア(伝導電子と正孔)の密度が変化すると、シリコンの屈折率と光吸収率が変化する。屈折率が変化する現象を「エレクトロリフラクティブ効果」と呼ぶことは既に述べた。
キャリア密度が変化すると、屈折率はどのように変化するだろうか。具体的には、キャリア密度が増加すると、屈折率はごくわずかに減少する。伝導電子と正孔のいずれも、屈折率を1000分の1から100分の1ほど下げるためには、立方メートル当たりのキャリア数を1024〜1026ほど、増やす必要がある。
シリコンフォトニクスでは、シリコン光導波路にpn接合を形成し、pn接合のキャリア密度を印加電圧によって制御することで、屈折率を増減する。屈折率の変化量と光導波路の長さの積によって光の位相の変化量が決まる。
ここで最も重要なのは、光導波路を進行中に光の位相が180度ずれるパラメータである。通常はpn接合に加える電圧(V)と、光導波路の長さ(L)の積でこのパラメータを表現する。例えば波長が1550nmの光ビームがシリコンpn接合の光導波路中を進行する場合、おおよそ1Vcm〜3Vcmとなる。pn接合のキャリア密度を大幅に増やすことは簡単ではない。実際にはpn接合に逆バイアスを与えて空乏層を作り、キャリア密度をゼロに減らすことで屈折率を増加させる。
(次回に続く)
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