EE Times Japanが前回、PCIM Asiaを取材したのは「PCIM Asia 2016」だが、その時に比べて最も異なっていたのが、SiC(シリコンカーバイド)パワーデバイスを展示していたメーカーの多さだ(関連記事:中国のパワー市場は発展途上でも、日米欧を猛追)。2年前の展示会では、中国メーカーとしては、中国の鉄道車両メーカーCRRC(中国中車)のグループ会社で、パワーエレクトロニクス製品を手掛けるCRRC Yongji Electricくらいしか、SiCを展示しているメーカーを見つけることができなかった。
だが、この2年でずいぶん変わり、「SiC」の文字を掲げた地元メーカーのブースを多く見かけた。三菱電機の楠氏によると、「SiCパワーデバイスの量産が既に始まっている日本や欧州に比べて、中国は本格的な量産はこれから、というところがほとんどだ。実際にSi(シリコン)からSiCに置き換えるというレベルまでは達していない」という。
ただし、SiCへの関心は極めて高い。楠氏も「展示会で多くの問い合わせがある」と述べる。その他、ロームの中国法人であるROHM Semiconductor(Shanghai)、Infineon Technologiesの中国法人Infineon Technologies China、PCIM Asiaに初めて出展した三井物産エレクトロニクス、米国United Silicon CarbideなどのSiC製品を扱うディストリビューターDalian Si Power Technology、CRRC Yongji Electric、中国電科など、SiC関連の展示を行っていた多くの出展企業が、口をそろえてSiCのニーズの高さを語った。
ROHM Semiconductor(Shanghai)の説明担当者は、「SiCについてはモジュールではなくディスクリート品に対するニーズが高い。とりわけ、Si-FRD(ファストリカバリーダイオード)を置き換えられるSiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)の出荷が多い。SiC-MOSFETとSiC-SBDを使ったフルSiCモジュールについては、同モジュールを使って車載用インバーターを開発している顧客はいるものの、従来のIGBTを使ったモジュールに比べて、コストが6〜7倍するので、まだまだ手が出せないでいるようだ」と述べた。
三井物産エレクトロニクスは今回、パートナー企業である岡本工作機械製作所やミマスなどと合同で出展した。三井物産エレクトロニクスで装置・電材事業本部 装置第3部でチームリーダーを務める田村真一氏は、「中国では、エアコン、太陽光発電のパワーコンディショナー、サーバ用の電源が、SiCの主な市場だと聞いている」と述べる。岡本工作機械製作所の営業本部 グローバル営業部の井上健瑠氏は、「SiCウエハーの加工装置の中国での出荷台数は上昇傾向にある。中国や台湾の装置メーカーとの競争が厳しくなっているが、プロセス技術についての知識とノウハウを訴求して、勝負していきたい」と語った。
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