Appleが世界最大のチップ設計企業の一つであるという新時代の中で、「次世代のIC設計者となるのはシステム設計者だ」とRhines氏は述べた。
Rhines氏によると、Mentorのルーツがシステム事業にあることは、前述したような新たな環境において大きなプラス要素だという。Mentor がApollo Computerのワークステーション上で作動するソフトウェア「Daisy」を手掛けていた1980年代から、同社のツールはさまざまなシステム企業に採用され、長年にわたり定着してきた。
EDAベンダーは皆、システム中心の“すばらしい新世界”での成功を求めて競い合っている。Mentorは、自動車や航空宇宙事業でSiemensが培ってきた技術(システム設計から製造、製品ライフサイクル管理までを網羅)と組み合わせることで、他社に先んじて有利なスタートを切った。
「システム企業の半導体設計者と共同開発する場合、EDA企業はビジネスをどのように変化させていくべきか」という質問に対して、Rhines氏は、「一般的に、システムグループは常に、システム要件に最新の注意を払っている。そのため、システム要件のトレースができるツールが重要となる。システムグループは、配線やシグナルインテグリティ、コストの最適化に対応した設計をトレースすることで、システムレベルの要件を満たしていることを確認したいと考えている」と述べた。
Siemens PLM SoftwareのHemmelgarn氏によると、両社の製品の統合は既に、顧客にとって非常に良い形で進んでいるという。例えば、Siemens PLMのCAD製品は、Mentorのワイヤハーネス設計に組み込まれている。プリント配線板(PCB)や集積回路の設計においても、同様の統合を実施する計画だという。
統合は、概念レベルだけで行われているわけではない。「例えば、欧州のある航空機メーカーは、SiemensおよびMentorの製品の緊密な統合に、既に価値を見いだしている」とHemmelgarn氏は主張する。この航空機メーカーは、SiemensのCAD製品とMentorワイヤハーネス設計を統合することで、航空機全体に3D(3次元)配線を施すことができたという。
「注目すべきは、SiemensがあらゆるFMI(Functional Mockup Interface)のシミュレーションモデルを有していることだ」とRhines氏は述べている。FMIは、ツールに依存しない標準規格で、XMLファイルとコンパイル済みCコードを組み合わせて動的モデルのモデル交換とコシミュレーションの両方をサポートする。
Siemensは、世界中の工場の運営も手掛けている。Rhines氏は、「SiemensのクラウドベースのオープンIoT(モノのインターネット)オペレーティングシステム「MindSphere」を導入すれば、製品やプラント、システム、マシンを自在に接続することができる」と主張している。MindSphere上に構築されたゲートウェイは、IoTで生成された大量のデータを収集できる他、高度な分析機能も備えているという。
Hemmelgarn氏は、「IoTを使用することで、製造プロセスで何が起こっているかについて、分析や理解を深めることができる」と述べている。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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