またNAVは、半導体メーカーAquantiaやNVIDIA、Robert Bosch、Continental、Volkswagenなどが参画する業界団体だ。IEEE Ethernetグループと足並みをそろえて、「IEEE 802.3 Multi-Gig Automotive Ethernet PHY(以下、Multi-Gig Automotive Ethernet PHY)」の開発に取り組んでいるという、大きな強みを持っている。こうした動きの背後にあるのは、半導体メーカーAquantiaの力だ。同社が開発した高速のマルチギガビットイーサネット技術は、現在データセンター(10ギガビットイーサネット(GbE)/25GbE/100GbE)やエンタープライズインフラ(2.5GbE/5GbE/10GbE)で使われている。これにより同社は、他社と一線を画すことに成功している。
Aquantiaのオートモーティブプロダクト部門でマーケティング担当バイスプレジデントを務めるAmir Bar-Niv氏は、2018年7月に行われたEE Timesのインタビューで、「自動車業界には、これまでマルチギガビットのオートモーティブイーサネットが存在しない、孤立した分野があった。その部分が今では、他のプレイヤー企業が参入して独自のソリューションを市場投入できるよう、門戸を開いている。現在では、Multi-Gig Automotive Ethernet PHY規格が順調に進んでいることもあり、孤立した分野はもう存在しない」と述べる。
Aquantiaは、「自動車メーカー各社やティア1がMulti-Gig Automotive Ethernet PHYを導入するのは、ごく当然の結果だ」とみている。
Aquantiaは、「自動車業界は、Automotive Multi-Gig Ethernet PHYが最近追加されたことにより、既存のイーサネットの長所を生かすことができると気付いたようだ。例えば、複数のベンダーが関わっていることや低コストであることの他、スイッチングや同期、TSN(Time Sensitive Networking)、セキュリティ、トポロジーなどが挙げられる」と述べる。
しかし、ここで重要なのは、全ての長距離伝送の車載用インタフェースが、同じように作られているわけではないという点だ。米国の市場調査会社であるStrategy Analyticsでオートモーティブエレクトロニクスサービス担当ディレクターを務めるIan Riches氏は、その一例として、「MIPIのオートモーティブ関連の取り組みは、HDBaseTとは異なる。MIPI A-PHYは、ポイント・ツー・ポイントの非同期リンクだ。一つの方向に膨大な帯域幅があるが、反対方向は制限されている。シンプルなデータパイプであるため、USBやイーサネットの他、HDBaseTなどのパワーをネイティブサポートしていない」と指摘する。
Riches氏は、「それでもMIPIは、広帯域源(例:カメラ)を中央制御装置に接続するオートモーティブイーサネットなどの、他のマルチギガビット接続と競争することになるだろう」と述べる。
同氏は、「これらの競合する接続ソリューションを比較するとどうなるか」とする質問に対し、「イーサネットは、ネットワークが必要な場合に適している。HDBaseTは、パワートランスミッションやUSBなどをサポートすることが可能だ。MIPI A-PHYは、自動車向け高速インタフェースのAPIXや、インフォテインメント系シリアルリンクであるFPD-Link、GMSL(Gigabit Multimedia Serial Link)など独自のLVDSソリューションに対して直接競合することになるだろう。MIPI A-PHYは、バックチャンネルにおいて、ある場所から別の場所に単純にデータを移動させる場合に、最適だといえる」と述べる。
MIPI Allianceの取締役であり、Qualcommの技術担当シニアディレクターを務めるRick Wietfeldt氏は、「イーサネットとMIPI、HDBaseTはいずれも、自動車エコシステムの中で役割を担う、補完的な技術だ」と述べる。
同氏は、「MIPIは自動車業界に対して、主に『性能』と『再利用』、『エコシステム』の、3つの特定のメリットをもたらす」と説明する。「さらに具体的には、MIPI A-PHYには、カメラやセンサー、ディスプレイ接続などに向けて調整した非対称リンクを提供するというメリットがある。他の技術との差別化を図ることも可能な、効率に優れた手法だ」(同氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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