キーサイト・テクノロジーは、欧州電気通信標準化機構(ETSI)による2.4GHz帯/5GHz帯無線機器用規格の変更にも、対応が容易な試験システムの提供を始めた。
キーサイト・テクノロジーは、欧州電気通信標準化機構(ETSI)による2.4GHz帯/5GHz帯無線機器用規格の変更を受けて、これに対応できる試験システムの提供を始めた。既存の信号発生器やシグナルアナライザーを活用できるため、高価な無線機テスターを新たに用意する必要がない。既に台湾では多くの認証機関で採用されているという。
IMSバンドと呼ばれる2.4GHz/5GHz帯は、さまざまな無線規格が存在し、多数の無線機器/モジュールが同じエリア内で利用されている。このため、無線機器は妨害波に対する耐性を一段と高める必要があり、各国の標準化団体などが、市場の変化に対応するための新たな規格や試験項目を策定している。
ETSIは今回、2.4GHz帯無線機器用の規格「ETSI EN 300-328 V2.1.1」と5GHz帯無線機器用の規格「ETSI EN 301-893」で、測定の追加や試験内容の変更を行った。いずれも新規格への移行期間は既に完了しているという。これらの規格に準拠していない無線機器は今後、欧州で販売できなくなる可能性が高い。
ETSIが行った規格変更の内容はこうだ。ETSI EN 300-328 V2.1.1では「Receiver Blocking」試験にPER(Packet Error Rate)測定の項目が追加された。これまでUUT(被テストユニット)は、必要な受信感度をクリアすればよかった。今回の変更で、妨害環境での受信試験もパスすることが必須となる。
一方のETSI EN 301-893は、「V1.8.1」と「V2.1.1」の規格で、「Adaptivity(適応能力)」の試験内容が変更となった。同一チャネル周波数を使用した他の機器があれば、その電波を検出し、衝突回避に向けてUUTが行う送信停止などの手順を確認しなければならない。また、5GHz帯のReceiver Blocking試験においてもPER測定が追加された。
このような無線規格に対応する測定環境としてこれまで、シグナリング(呼接続)可能な無線機テスターなどが用いられてきた。ところが、専用の無線機テスターは比較的高価で、Wi-FiやZigbeeなど無線フォーマットごとに、異なる機種を用意する必要があったという。
キーサイトが提供する欧州無線機器指令(2.4GHz/5GHz)試験システムは、新たに用意したシグナリングコンディションボックス「AD211A」と、妨害信号を生成するための信号発生器、シグナルアナライザー「Xシリーズ」および、Wi-FiやZigBeeといった各種無線フォーマットの対向機を組み合わせて、UUT試験を行うことができる。
AD211Aは、UUTと対向機が通信している状態で、内蔵するDAQ(Data Acquisition)でパケットをカウントすることができる。この製品はETSIの規格変更に合わせて、台湾の開発グループが特定顧客に対するカスタムソリューションとして開発したものだが、日本国内でのサポートおよびメンテナンス体制を整えたことから、提案活動を本格的に行うことにした。価格はAD211Aと関連ソフトウェアで約500万円だという。
AD211A以外は既存のXシリーズや、ベクトル信号発生器「XSG/ESG」シリーズ、2.4GHz/5GHz対応のRFアナログ信号発生器などを活用することができる。同等性能であれば他社製の信号発生器も利用可能だという。
今回提案する試験システムは、ETSIによる2.4GHz帯/5GHz帯無線機器用規格に対応したものだが、ソフトウェアオプションにより、日本や米国、韓国などで定める電波法試験を行うこともできる。
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