イノベーション戦略の一つである「テクノロジーで社会的課題を解決」に関する取り組みとして、「スマートバス停で持続可能なまちづくり」プロジェクトの事例を紹介した。同社執行役員でディスプレイソリューションズカンパニーの社長を務める湯田克久氏は、「日本中にバス停は約50万箇所あるが、このうちスマートバス停の比率は1%にも満たない。その大きな理由はバス停の約70%に、スマートバス停を駆動させるための電源が敷設されていないからだ」という。
同社が開発したスマートバス停向け反射型液晶ディスプレイは、消費電力が0.3Wである。消費電力が200W級の一般的な屋外専用透過型液晶ディスプレイに比べて、消費電力は極めて小さい。このため、太陽光発電パネルとバッテリーを組み合わせて設置すると、最長5日間は発電しなくても液晶ディスプレイを駆動することができるという。外部電源を敷設する必要がなく、これまでスマートバス停の普及を阻害していた要因を排除できるとみている。
スマートバス停には時刻表や路線図、走行中のバス位置など、関連情報が大きく見やすい文字で表示される。必要に応じて、地域のイベント情報や、災害時の重要情報などを表示させることも可能だ。
同製品は既に、西鉄グループと安川情報システムが推進するスマートバス停向けに採用され、2018年8月より福岡県北九州市明和町バス停で、実証実験を行っている。今後、実証実験用のバス停数を増やす。2019年以降にも北九州市で本格導入が始まる予定だ。
同社は国内全域で同製品の普及に力を入れる。さらに、オフグリッドディスプレイ装置として2020年より欧州・アジア地域で、2021年からは南半球地域で、ビジネスを展開する計画だ。
会場では、B2C(Business to Consumer)に向けたコンセプト商品などもいくつか紹介した。ライブパフォーマンスプレーヤー「XLP-01 MiOn(ミオン)」は、筐体内部空間に立体感ある映像を表示できる。楽曲と組み合わせればリアルで臨場感ある「見る音楽」を再現することが可能となる。
映像(視覚)と香り(嗅覚)で新たな空間演出を行うのが「紡ぎシリーズ」である。紡ぎシリーズとして今回は2種類を紹介した。高精細ディスプレイをタイリングさせた壁掛けインタフェース「XHL-01 Hlley」および、鳴海製陶とのコラボレーションで実現した、ディスプレイを陶磁器に埋め込んだインテリア「XAQ-01 AQUARIUS」である。
もう1つは、小型のヘッドアップディスプレイ(HUD)を搭載した外付けユニット「XHD-02 KAIKEN(懐剣)」である。2018年8月にはHUD内蔵型スマートヘルメット「スパルタ」を発表し、大きな反響を得たという。今回の製品はヘルメットに着脱可能な構造とした。これにより、既存のヘルメットにも容易に装着できる。
最後に伊藤氏は、「新しいことにトライする時、重要なのは『できるか、できないか』ではない。全ては、『やるか、やらないか』である。JDIは『やる』ことを選択する」と述べ、発表会を締めくくった。
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