アナリストらは、EVの生産規模が拡大される可能性が最も高いのは、世界最大規模のEV市場である中国だと考えている。中国では、現在までに約100万台のEVが販売されており、2020年には500万台に達すると予想されている。世界EV市場の調査を手掛けるAllied Market Researchによると、中国のメーカーが2017年に出荷した商用EVは20万台以上に上り、世界全体の出荷台数の約5%を占めるという。
Allied Market Researchでオートモーティブリサーチ担当アナリストを務めるRahul Kumar氏は、「このような数字の背景には、繰延需要や政府のインセンティブ、EV分野への巨額の投資などがある。実際に、中国は現在、世界最大のEV製造国となった。アジア太平洋地域では、ここ数年の間にEVの導入がかなり進み、今後数年間でEV市場における優位性を確立するとみられている」と述べる。
アジアのEVメーカーの中で最も勢いづいているのが、NIOだ。同社は2018年6月に、中国市場向けとしては初となる量産モデル「ES8」を発表している。
同社は2014年に設立され、2016年には、開発したEV「Electric Performance 9(EP9)」で、ドイツの試験走路において最速のラップレコードを記録し、その名を広めることになる。また同社は、量産モデルの電気自動車として過去最高となるラップタイムを達成し、米国の記録を打ち破った。同社の中国名「蔚来(Weilai)」は、「blue sky coming(青空が広がる未来)」という意味があるという。
NIOの創設者であり、チェアマン兼CEOを務めるBin Li氏は2018年8月、投資家たちに向けて、「自動運転やEV技術、AI(人工知能)、クラウドサービスなど、さまざまな技術の高度化が進んでいることを受け、自動車業界が変化している。このような革新的技術の実現により、ドライバーたちを毎日の退屈な通勤から解放できるだけでなく、自動車の安全性や、環境への配慮も高められるようになる。また、自動車を変形させて移動型の生活空間にするなど、最終的にはユーザーのライフスタイルの大部分を占めるようになるだろう」と語っている。
Li氏は、「NIOは、自社開発の運転支援システム『NOMI』の他に、さらに高度な『Pilot』も開発している。これにより、量産自動車に、最新の自動運転支援とAI技術を搭載可能であると実証することができた」と付け加えた。
NIOは、他のEVメーカーと同様に、EVのさらなる低価格化を実現することで幅広い市場に参入すべく、その方法を模索しているところだ。同社は2018年末までに、7人乗りのSUVタイプのEVを発表する予定だとしている。
NIOの他にも、Teslaの対抗となりそうなメーカーは数多く存在する。しかし現状では、NIOのように、技術革新や事業規模の拡大を実現できそうな能力を披露した新興企業は、ほとんどない。上海に拠点を置くNIOは、中国のWeb大手でAI分野の先駆者であるBaiduや、インターネットやゲーム大手のTencentから支援を受けている。例えばTencentは、NIOに音楽ストリーミングサービスを提供している。
こうしてNIOは、Teslaにとって“てごわい相手”といえる存在になった。今後、EV向けの世界最大市場における需要に対応すべく、競争を繰り広げていくことにより、世界電気自動車市場に変革をもたらすことになるだろう。同市場には現在、政府からの豊富な補助金が提供されている。
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