WDのCTO(最高技術責任者)を務めるMartin Fink氏は、「エコシステムは、ここ1年間で進化を遂げており、非常にうれしく思う。2017年には、Teslaなどの有名企業やツールベンダー数社が、メンバーとして参画した。次の段階として、TSMCやGLOBALFOUNDRIESなどのファウンドリー各社からも全面的な支持を得たいと考えている」と述べている。
このイベントで最も驚いたことの1つは、RISC-Vプロセッサとアクセラレーター、メモリを接続したキャッシュコヒーレントなインターコネクト向けに開発したプロトコルをWDがオープンソースとして公開したことだ。WDのオープンネットワークプロトコル「OmniXtend」は、イーサネットの物理層(PHY)上でも動作できるので、増え続けるオープンなインターコネクトや特許インターコネクトの中で、RISC-Vの新たなポジションを確立すると期待される。
Fink氏は、「標準化団体CCIX Consortiumが策定するインターコネクト仕様『CCIX』とIBMのインターコネクト技術『OpenCAPI』は、どちらもファブリックプロトコルではなく、ポイント・ツー・ポイントプロトコルだ。Gen-Z Consortiumが策定するインターコネクト仕様『GenZ』はファブリックプロトコルだが、コヒーレンシのサポートは計画段階でまだ対応できていないので、イーサネットのような低コストのコモディティPHYには接続できない」と説明している。
WDはOmniXtendのコードをユーザーの希望に対応する形でリリースする予定だという。Fink氏は、「特定の企業だけが有利になることがないように設計する」と述べている。
同社は、顧客が望むあらゆるインタフェースに対応することを目指している。x86プロセッサだけに対応したIntelの独自インタフェース「Omni-Pat」やDDR-Tに代わる、オープンなインタフェースにしたい考えだ。
OmniXtendは2019年6月に、WDのプロトタイプボードとSiFiveのRISC-Vコア、米国の新興企業Barefoot Networksのイーサネットスイッチを使用して、実行コードをオープンソースの新言語「P4」で記述したシステムに実装する予定だという。WDは、設計対象の帯域幅やデータレートについては明らかにしていない。
WDはこれとは別に、32ビットのインオーダーコア「RISC-V SweRV Core」のオープンソースコードを2019年4月までにオンラインでリリースする予定だという。同コアは、28nmプロセスを適用。最大1.8GHzで動作し、4.91 CoreMarks/MHzの処理性能を実現する。性能スコアは、ArmやMIPSなどの多くのインオーダーコアやいくつかのアウトオブオーダーコアを上回るという。
Fink氏は、「当社初のRISC-Vコアは期待を上回る性能を実現したため、現在使用している他のコアに代わるコアになり得る」と述べている。
現在、SweRVコアのシミュレーター用のオープンソースコードを入手可能である。WDは、同コアをベースとした製品を2019年末にテープアウトする予定だという。
Fink氏がWDに入った2年前は、オープンソースは文化的規範ではなかった。そのため、SweRVコアとプロトコルの開発には反対の声が上がることも覚悟したが、WDの経営陣は開発チームを支援したという。「その結果、当社はオープンな強みを獲得することができた」とFink氏は述べている。
WDの最先端技術開発チームは、2014年にRISC-Vコアの開発を開始したという。Fink氏は、「開発チームから開発状況の報告を受ける中で、私はオープンソースモデルについての知識を深め、その素晴らしさを認識した。そしてついに、業界を変革するチャンスが訪れた」と語った。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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