市場の成長を減速させる大きな要因は、供給過剰による価格の崩壊だ。価格崩壊は最初にNANDフラッシュメモリで発生した。価格崩壊によって記憶容量当たりの単価は、64層の3D NANDフラッシュの製造コストである、ギガバイト当たり0.08米ドルを下回る水準にまで低下してきたと推定した。
従来技術によるプレーナー型NANDフラッシュメモリは、もはや値下がりに追随できない。生産ラインを閉鎖する、あるいは生産品目をDRAMに変更するといった対応を迫られる、とHandy氏は指摘する。
続いてDRAMでも、供給過剰と価格崩壊が発生した。生産ラインを閉鎖したり、生産品目をSRAMやNORフラッシュメモリなどに変更したり、あるいは生産ラインをファウンドリー用へと転換したりすることになる。さらに他の半導体製品へと、供給過剰は波及しつつある。非メモリの半導体でも、価格崩壊が起こる可能性が少なくない。
Handy氏は講演で、プレーナー型NANDフラッシュと3D NANDフラッシュの製造コストを比較してみせた。16nm世代の製造技術によるプレーナー型NANDフラッシュは、1枚のウエハーから記憶容量に換算して5.6Tバイトのシリコンダイを作れる。これに対して32層(既に古い技術であることに注意)の3D NANDフラッシュは1枚のウエハーから記憶容量に換算して17.2Tバイトのシリコンダイを製造できる。
ウエハー1枚の処理コストはプレーナー型NANDが1200米ドルと低く、3D NANDが2000米ドルと高い。それでも記憶容量の差が処理コストよりも大きいので、記憶容量当たりの製造コストは3D NANDが0.12米ドル/Gバイト、プレーナー型NANDが0.21米ドル/Gバイトとなる。32層の3D NANDの記憶容量当たりの製造コストは、プレーナー型NANDフラッシュの半分に近い。
重要なのはここからだ。プレーナー型NANDフラッシュメモリは、16nm世代が微細化のほぼ限界で、記憶密度を高める手段がない。言い換えると、記憶容量当たりの製造コストを下げられない。これに対して3D NANDはワード線の積層数(あるいはペア薄膜のペア数)を増やすことで、記憶密度を上げられる。記憶密度を上げて記憶容量当たりの製造コストを下げることで、今後の値下がりに対応できる。この違いが、プレーナー型NANDの生産ラインを縮小へと動かす、大きな力となっている。
(次回に続く)
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