産業技術総合研究所(産総研)は、高周波領域で高精度に回路特性を計測できる技術を開発した。この技術を用い、300GHzの周波数領域で印刷配線の回路特性を評価した。
産業技術総合研究所(産総研)物理計測標準研究部門電磁気計測研究グループの坂巻亮研究員、堀部雅弘研究グループ長とセンシングシステム研究センタースマートインタフェース研究チームの吉田学研究チーム長らは2019年5月、高周波領域で高精度の回路特性を計測できる技術を開発したと発表した。この技術を用い、300GHzの周波数領域で印刷配線の性能を評価した。
5G(第5世代移動通信)システムなどへの移行に伴い、ミリ波帯のデバイス性能や回路特性を評価する技術が重要となってきた。これらの測定には、高周波プローブを被測定物に接触させて行う。ところが、プローブと測定端子との接触圧力や位置など、接触部の状態によっては測定精度が大きく異なるため、そのばらつきが課題となっていた。
今回は、300GHz帯の超高周波領域においても、回路の特性を極めて高精度に測定できる「プローブ位置合わせ技術」を開発した。この技術を用いて、印刷技術で作製した高周波伝送線路(コプレーナ導波路)の伝送特性を測定することに成功した。
開発した位置制御技術は、高周波プローブを電極上に配置する。これをコンピュータ制御により、例えば1μmステップで下げながら電気特性/反射特性を測定する。プローブが電極表面に触れると、反射特性が急峻(きゅうしゅん)に変化する。この変化を検出することでプローブと電極の位置関係を判断する。これらのデータから電極の表面と端面(側壁)をプローブの基準位置と決め、接触させる位置制御の再現性を高めた。
300GHz帯における測定の再現性を検証した。その結果、4回測定した最大偏差(ばらつき)は、従来方式に比べ反射特性が振幅で約89%、位相で約66%、伝送特性は振幅で約44%、位相で約70%とそれぞれ大幅な改善となった。
今回の技術により、340GHz帯まで再現性良く測定できるという。研究グループは、長さ5250μmのコプレーナ導波路を、印刷技術と従来の金属成膜技術で作製し、340GHzまでの信号について伝送特性と反射特性を評価した。この結果、印刷技術で作製したコプレーナ導波路の伝送特性は、金属成膜技術を用いたものより低損失であることが実証されたという。特に、300GHzでは約65%の損失であった。
研究グループは今後、開発した計測技術を印刷法で作製したセンサーやデバイスの高周波動作の実証に用いる。また、500GHz帯などさらなる高周波化への対応も検討する。
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