今回は、相変化メモリ(PCM)が市場から一度消えた後に、「3D XPointメモリ」で劇的に復活したことをご説明しよう。
2018年8月に米国シリコンバレーで開催された、フラッシュメモリとその応用製品に関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」でMKW Venture Consulting, LLCでアナリストをつとめるMark Webb氏が、「Annual Update on Emerging Memories」のタイトルで講演した半導体メモリ技術に関する分析を、シリーズでご紹介している。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
前回は、DRAMとNANDフラッシュメモリのギャップを埋めることが次世代メモリの主な狙いであること、次世代メモリの最有力候補は相変化メモリ(PCM)、磁気抵抗メモリ(MRAM)、抵抗変化メモリ(ReRAM)の3つであることを述べた。今回は、相変化メモリ(PCM)が市場から一度消えた後に、「3D XPointメモリ」で劇的に復活したことをご説明しよう。
前回に解説したように、PCMは2009年に128Mビットの単体メモリが市販されたほか、カスタム品がいくつか商業化された。しかし2013年には、単体メモリの販売は休止されている。そして2015年7月に、IntelとMicron Technology(以下、Micron)が共同開発を発表した高速大容量不揮発性メモリ「3D XPointメモリ」としてよみがえった。ただし「3D XPointメモリ」がPCMであることが判明したのは、シリコンダイを分析した企業が2017年8月に分析結果を発表したからである。IntelとMicronは現在に至るまで、「3D XPointメモリ」の技術詳細を正式には公表していない。
IntelとMicronが2015年7月の報道機関向け発表会でうたった「3D XPointメモリ」の性能はすさまじいものだった。NANDフラッシュメモリの「1000倍」も高速で、NANDフラッシュメモリより「1000倍」も書き換え寿命が長い、といった宣伝文句が飛んでいた。
しかし「3D XPointメモリ」を内蔵するストレージ製品(HDDキャッシュやSSDなど)をIntelが販売し、その実力がNANDフラッシュメモリ内蔵のストレージと比較されるようになると、様相はかなり違ってきた。確かにNANDフラッシュメモリ内蔵のストレージよりも高速だった。ただし、速度の違いは10倍未満にとどまっていた。
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