東京大学生産技術研究所は2019年6月10日、大容量で低消費電力な8nmの極薄IGZOチャネルを有するトランジスタ型強誘導体メモリ(FeFET)を開発した、と発表した。同所は、「IoTデバイスのエネルギー効率が飛躍的に向上し、より高度で充実したネットワーク、サービスの展開が期待される」としている。
東京大学生産技術研究所は2019年6月10日、大容量で低消費電力な8nmの極薄IGZOチャネルを有するトランジスタ型強誘導体メモリ(以下、FeFET)を開発した、と発表した。同所は、「IoTデバイスのエネルギー効率が飛躍的に向上し、より高度で充実したネットワーク、サービスの展開が期待される」としている。
あらゆるものがインターネットにつながるIoT(モノのインターネット)の普及に向け、センサーや通信機能が備わったIoTデバイスは、低消費電力化が求めらている。そして、IoTデバイスの消費電力の多くを占めるリーク電力を削減するため、待機時の電力を抑えることができる低消費電力な不揮発性メモリの開発が重要となっている。
そうした中で、強誘電体をゲート絶縁膜とするFeFETは、低消費電力で大容量という特長があり、特に、集積回路作製プロセスと整合性が高く、10nm以下の膜厚でも強誘電性を示す強誘電体二酸化ハフニウム(HfO2)材料が開発されていることから、注目を集めているという。
しかし、シリコンをチャネルとする従来のFeFETデバイス構造では、ゲート絶縁膜とチャネルの間に誘電率の低い界面層が形成されるため、界面層に大きな電圧降下や界面層を通じた電荷トラップが起こり、低電圧動作と高信頼性動作を同時に実現することが困難だった。また、3次元積層構造にする場合にはチャネルは移動度の低いポリシリコンを用いる必要があるため、読み出し電流が小さく、アクセス時間が遅くなる懸念もあったという。
そこで、同所の准教授、小林正治氏らは今回、界面層の形成と電荷トラップの影響を抑制し、3次元積層構造でも高い読み出し電流を得るために、金属酸化物半導体IGZOをチャネルとする強誘電体HfO2ゲート絶縁膜FeFETを開発した。
このデバイス構造を用いると、IGZO自体が金属酸化膜のため、強誘電体HfO2との間で誘電率の低い界面層の形成を抑えることができるという。また、N型にドープされているIGZOをチャネルにすることで、キャリアの電荷トランプを抑制している。
ゲート電圧がゼロの時に電流が流れないようにするには、しきい値電圧を制御する必要があるため、IGZOの膜厚を10nm以下にしている。10nm以下の膜厚では、ポリシリコンの移動度は10cm2/Vs以下となるが、IGZOであれば10〜100cm2/Vsの高い移動度を維持することができるという。膜厚の適正化の結果、8nmが最適値となった。
電流伝達特性は電流のオンオフ比が5桁以上の良好な特性を示し、サブスレッショルド係数は60mV/dec、電界効果移動度は、同じ膜厚でのポリシリコンチャネルより50%以上高い、10cm2/Vs以上となっている。
小林氏らは今後、トップゲート型や積層型ゲート構造の開発、評価を行うほか、IoTやストレージクラスメモリへの応用のため、1.8V動作や書き換え速度の高速化、10年間のデータ保持、1012回の書き換え耐性、1〜10μAの読み出し電流を目指し、デバイス開発を行うという。
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