PCIeやその他のメタルケーブル(銅)といったインターコネクトでは、転送速度がかつてないほど高速化しているが、転送距離は伸びていない。前世代と同じ距離の伝送をサポートするには、より優れた基板材料を採用するか、リタイマーチップを使用する必要があるが、どちらも非常に高額である。
PCIe 1.0の仕様では、当時の主流だったFR4基板の配線部分を介して信号を最大約50cm送信し、2つのコネクターを経由することもあった。16GT/sのPCIe 4.0を使用する今日のハイエンド製品をベースにした信号は、コネクターを経由するどころか、コネクターに到達する前に減衰する場合もある。
PCI-SIGはGen4以降、設計の多様性を考慮して、同仕様がサポートする伝送距離を発表していない。その代わりに、最新の仕様では、良好な信号にするためのアイダイアグラムの高さと幅を定義している。この他、信号損失に関するガイダンスの概略も提供している。Gen4では28dB、Gen5では36dB程の損失があるとされるが、Gen6に関しては現時点では定義されていない。
Keysight Technologies社員であるPCI-SIGのボードメンバーは、「特定の設計におけるクロストークのレベルやコネクターの反射、使用される材料など、不明なことが多過ぎる」と述べている。
機器メーカーはコストを削減するために、システム内の複数の小型ボードに実装されているコンポーネントを短ケーブルで接続する手法を取ることが増えている。
HPE(Hewlett-Packard Enterprise)のフェローで、複数のパートナー企業にシステム設計のアイデアをシェアしてきたMichael Krause氏は、「例えば、筺体と同じ長さのあるマザーボードを設計する代わりに、ソケットとDIMM(Dual In-line Memory Module)だけを実装する超小型基板を搭載するシステムを設計し、ケーブルを使って伝送距離を延ばすこともできる。多くのプラットフォームベンダーが、モジュール方式の機械設計に移行中であるか、移行を計画している」と述べている。
Krause氏は、「新しい手法で生産量を増やしてコストを削減するために、機器メーカーは、小型のボードサイズとコネクタータイプを標準化する必要がある。いくつかの標準化団体は既に、新しいフォームファクタを定義している」と付け加えた。
PCI-SIGのプレジデントであるYanes氏は、「PCIeケーブル外部接続の成功事例は多くないが、一部のメンバーは筐体内のケーブル接続を採用していると聞いている。ケーブルが悪いもののように考えられていた20年前から大きく変化した」と述べている。
「PCI-SIG Developers Conference 2019」(2019年6月18〜19日、米国カリフォルニア州サンタクララ)では、IP(Intellectual Property)ベンダーとテストベンダー数社がGen4とGen5設計のデモを披露した。Synopsysのエンジニアによれば、同社のGen4 IPのライセンシー(ライセンス利用者)は既に160に上るという。その中には、AI(人工知能)チップを手掛けるイスラエルHabana Labsも含まれている。
PCI-SIG Developers Conference 2019では、Marvell Technology GroupのIPチームが、Gen5 x4のテストブロックのデモを展示した。将来的にはSSD向けコントローラーの一部になり得る可能性があるものだ。Intelは、同社が2021年に発表する予定のプロセッサでGen5をサポートすると述べている。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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