Qualcommのプロダクトマネジメント担当シニアディレクターとしてIndustry 4.0部門を率いるGerardo Giaretta氏によると、5G技術の本格展開は、インダストリアルIoT(IIoT)に広範囲の影響をもたらすが、短期間で全てのIIoTアプリケーションに影響が及ぶわけではないという。
Qualcommのプロダクトマネジメント担当シニアディレクターとしてIndustry 4.0部門を率いるGerardo Giaretta氏によると、5G(第5世代移動通信)技術の本格展開は、インダストリアルIoT(IIoT)に広範囲の影響をもたらすが、短期間で全てのIIoTアプリケーションに影響が及ぶわけではないという。
Giaretta氏は、2019年6月26、27日に米国カリフォルニア州サンノゼで開催された「Sensors Expo & Conference」で行った基調講演の中で、「5Gはスマートファクトリーなどの分野に多大な影響をもたらすが、比較的シンプルかつ大規模な配備が必要なアプリケーションに対して、直ちに適用されるわけではない」と述べた。Giaretta氏は、そのようなアプリケーションの例として、スマートメーターやさまざまな農業アプリケーションを挙げた。
そうしたアプリケーションの多くは引き続き、LTEの派生形であるLTE Cat MやNB-IoTなどのLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークに依存することになるという。Giaretta氏は、講演で数百人のエンジニアたちに、「汎用のLTEと比べ、LPWAのほうがよりIIoTアプリケーションに向いており、帯域幅の拡張やスピードといった5Gの利点を特に生かす必要がないユースケースに適している」と説明した。
少なくとも今後数年は、「多くのユースケースで、5Gでは不可能な、低価格を実現できるコスト構造を必要としている」のだという。
5Gは、現在、導入の初期段階にある。通信キャリアは一部の地域でサービスを始めたばかりで、5G携帯電話も市場に投入されて間もない。今後数カ月で本格的な展開が進み、レイテンシや速度の面で計り知れないほどの利点をもたらすことで、スマートフォンやその他のモバイル機器でモバイルブロードバンドを利用できるようになることが見込まれる。しかし、IoT、特にIIoTへの影響は広範囲(それもかなり広範囲)にわたる可能性がある。
Giaretta氏をはじめとする業界関係者は、5GがIIoTにもたらす最大の影響は、特定の製造施設でのみ稼働する5Gのプライベートネットワークを実現できるようになることだと考えている。そのようなネットワークが実現すれば、企業は限られたゾーン内で、特定の産業用アプリケーションに適合するセキュアな専用ネットワークを構築できるようになる。
LTE技術をベースにしたプライベートネットワークを導入している製造施設は既に存在する。だが、5Gシステムのアーキテクチャはプライベートネットワークを念頭に開発されているため、外部のネットワークに依存しない、独立型のプライベートネットワークの配備を可能にする。
LTEとは異なり、5Gはプライベートネットワークに周波数帯を割り当てるための、複数の選択肢を提供する。そうした選択肢の例として、特定の地域でライセンス周波数帯をモバイル事業者から取得する、同期または非同期シェアリングでアンライセンス周波数帯を利用する、などがある。また、一部の国では、IIoT用に特別に割り当てられた周波数帯を利用することも選択肢となる。
Giaretta氏は、「業界のプレイヤー、そしてスマートシティーのプレイヤーが、独自のネットワークを展開できるようになるのは、初めてのことだ。これはイノベーションを引き起こすだろう」と話した。そして、プライベート5Gネットワーク用のセキュアな通信技術には依然としてコストがかかることを強調しつつも、「5Gネットワークを展開する新しいモデルは、通信事業者と長期的な取引が必要な現在のプライベートネットワークのモデルとはかなり異なるだろう」と述べた。
なぜなら、IIoT用に5Gプライベートネットワークを導入する業界のプレイヤーは、自らがそのネットワークのオーナーであるため、今後10〜15年にわたり、どのようにネットワークを使うのか計画を立てられるようになるからだ。
Giaretta氏は、「これは本当に大きなイノベーションだ。工場のネットワークダイナミクスを一新する可能性を秘めている」としている。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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