まず、顧客の耳穴の型取りについては、販売現場の「相談員」と呼ばれる社員が、顧客のもとで専用のシリコンを使って行う。鼓膜の手前まで綿を入れた後、シリコンを入れて型を取るという形で、シリコンをゆっくり流し込んで15分くらいで固めて取るというのだが、この作業は、間違えると外科手術が必要になる場合もある作業であり、専門教育が必要という。
次に、耳穴型のシリコンを3Dスキャンし、データをもとにCADで不要な部分を切り取って、シェルと呼ばれる補聴器本体の設計をする。表面の凹凸を削って滑らかにし、耳の中に接触しても痛くならないようにすると同時に、ハウリングをしないように耳の中の隙間もなくすという作業で、製造現場では、技術者が注文書を片手に、慣れた手つきで「不要な箇所」を削り落としていく様子を見ることができた。どうすれば耳の中に接触しても痛くならないか、どこを削れば隙間が無くなるか、といった点は、「培ってきた経験、ノウハウ」をもとに行うのだという。
また、補聴器用ICやマイクの載った基板(マレーシアの工場でこの状態まで製造している)と、音を出すスピーカーの配置もここで設計する。シェルにスピーカーが当たるとハウリングの原因になるため、スピーカーとシェルを離したうえで、小型化のためできるだけ基板との距離を短くする。この全体の作業は、1件当たりおよそ30分程度となるという。
次に、出来上がったCADデータをもとに、専用の3Dプリンタでシェルを造形する。このプリンタでは一度に最大4人分のシェルが30分程度で出来上がるという。現場では、補聴器用の樹脂がレーザー焼結によって徐々に積み上がっていく様子が確認できた。
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