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熟練の職人技が支える、パナソニックの補聴器製造現場2019年で60周年を迎えた(3/4 ページ)

» 2019年09月30日 13時30分 公開
[永山準EE Times Japan]

耳穴型のシリコン作成

 まず、顧客の耳穴の型取りについては、販売現場の「相談員」と呼ばれる社員が、顧客のもとで専用のシリコンを使って行う。鼓膜の手前まで綿を入れた後、シリコンを入れて型を取るという形で、シリコンをゆっくり流し込んで15分くらいで固めて取るというのだが、この作業は、間違えると外科手術が必要になる場合もある作業であり、専門教育が必要という。

顧客の耳穴型を取ったシリコン。上側が耳の置となる(クリックで拡大)

3DスキャンしCADで設計

 次に、耳穴型のシリコンを3Dスキャンし、データをもとにCADで不要な部分を切り取って、シェルと呼ばれる補聴器本体の設計をする。表面の凹凸を削って滑らかにし、耳の中に接触しても痛くならないようにすると同時に、ハウリングをしないように耳の中の隙間もなくすという作業で、製造現場では、技術者が注文書を片手に、慣れた手つきで「不要な箇所」を削り落としていく様子を見ることができた。どうすれば耳の中に接触しても痛くならないか、どこを削れば隙間が無くなるか、といった点は、「培ってきた経験、ノウハウ」をもとに行うのだという。

左=3Dスキャン用の機器/右=読み込まれた耳穴型のデータ(クリックで拡大)

 また、補聴器用ICやマイクの載った基板(マレーシアの工場でこの状態まで製造している)と、音を出すスピーカーの配置もここで設計する。シェルにスピーカーが当たるとハウリングの原因になるため、スピーカーとシェルを離したうえで、小型化のためできるだけ基板との距離を短くする。この全体の作業は、1件当たりおよそ30分程度となるという。

左=流れるように不要な箇所を削っていった/右=基板やスピーカーの位置を決めている。小型にするため、なるべく間を短くする必要があり、職人技の見せ所だという(クリックで拡大)

3Dプリンタで造形

 次に、出来上がったCADデータをもとに、専用の3Dプリンタでシェルを造形する。このプリンタでは一度に最大4人分のシェルが30分程度で出来上がるという。現場では、補聴器用の樹脂がレーザー焼結によって徐々に積み上がっていく様子が確認できた。

左=3Dプリンタによって造形されていく様子/右=出来上がったシェル(クリックで拡大)

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