電源回路の進化を支えるインダクタ:福田昭のデバイス通信(222) 2019年度版実装技術ロードマップ(32)(2/2 ページ)
インダクタが最も普遍的に使われているのは、電源回路だろう。スイッチング電源やDC-DCコンバータなどは、インダクタを必ず組み込んでいる。その用途は電流とインダクタンス値の違いによって多様である。大電流・低インダクタンスではデータサーバー、大電流・高インダクタンスでは移動通信システムの基地局、小電流・低インダクタンスではスマートフォン、小電流・インダクタンスでは自動車エレクトロニクスなどに分かれている。
電源用インダクタの用途と、電流、インダクタンス値。出典:JEITA(クリックで拡大)
電源用インダクタを磁性材料で分類すると、メタルコンポジットインダクタとフェライトインダクタに分かれる。メタルコンポジットインダクタは、結晶系やアモルファス系の金属磁性粉末の表面に樹脂をコーティングした材料を磁性材料とする。巻線済みの絶縁被覆銅線とこの磁性材料を金型に充てんして一体成型することで、インダクタを作る。
メタルコンポジットインダクタには、フェライトインダクタに比べると大きな電流を扱えるという特長がある。ただし比透磁率が低いことから、インダクタンス値を高くしにくい。最近のスイッチング電源やDC-DCコンバーターなどはスイッチング周波数の向上によって必要とされるインダクタンス値が低くなっていることから、ノートPCやスマートフォン、タブレットなどの電源系インダクタとして普及した。また温度特性に優れていることから、自動車エレクトロニクスにも使われている。
フェライトインダクタは、磁性材料にフェライトを使ったインダクタである。ここでフェライトとは酸化鉄とマンガン、マグネシウム、ニッケル、亜鉛などを混合し、焼結した化合物であり、代表的な高透磁率磁性材料としてインダクタを含めた磁気部品に幅広く使われている。
フェライトインダクタの特長は、高い比透磁率によって高いインダクタンス値を得られることにある。自動車エレクトロニクス、移動通信システムの基地局、ノートPCなどの電源系インダクタに普及している。
メタルコンポジットインダクタとフェライトインダクタの比較。縦軸は電流、横軸はインダクタンス値。出典:JEITA(クリックで拡大)
(次回に続く)
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