東芝は2020年2月21日、3つの信号の双方向通信と100mW以上の電力電送が可能な「双方向多重伝送IC」および、データセンターのサーバ用電源システムなどに搭載できる「高速絶縁計測IC」を開発したと発表した。いずれも2022年度以降のサンプル提供を目指している。
東芝は2020年2月21日、3つの信号の双方向通信と100mW以上の電力電送が可能な「双方向多重伝送IC」および、データセンターのサーバ用電源システムなどに搭載できる「高速絶縁計測IC」を開発したと発表した。いずれも2022年度以降のサンプル提供を目指している。
今回発表した双方向多重伝送ICは、3つの信号の双方向通信と100mW以上の電力伝送をワンパッケージICで実現した製品だ。放電により破壊しないための厚膜の絶縁膜をICの上層に追加して形成するなど、特殊な製造プロセスを必要としない方法で実現したのは「世界初」(同社)としている。
従来のゲートドライバー用絶縁回路は多数の信号を送受信するため、信号ごとに1つずつICを並べる必要があり、小型、軽量化が困難だった。これに対し同社は、無線通信に利用されているFSK(Frequency shift keying)通信方式を「絶縁ICとして世界で初めて適用」(同社)。信号と電力のトランス(変成器)を共用化することで、ワンパッケージ化に成功したという。また、隣接するトランスが発する磁界を打ち消す構造にしトランス間の距離を最小化。製品の小型化も実現したとしている。
さらに、信号送信側から送られた信号をもと受信側回路がクロック信号を再生する「絶縁間クロック同期回路技術」を用いることで、温度変動などICの動作環境が変化しても常に送受信間の同期が可能となり、誤りのない通信を実現。通常FSK通信には不可欠となる高精度な外付け発振素子なしでも動作が可能となっている。
同社によると、インバーター制御基板にこのICを適用した場合、絶縁部分の占有面積を約35%削減できるという。
同時に発表した高速絶縁計測ICは、最大35MHzまでの高圧、高周波電流の計測を実現。例えばGaN(窒化ガリウム)などの高速パワー半導体を用いた高効率電源装置の制御用計測に適している、としている。
無線通信に用いられる電源不要のパッシブミキサー回路を適用したことで、従来必要だった、体積の大きな外付け絶縁電力伝送回路を削減。また、専用のキャリブレーション回路によって伝送精度も高めており、「従来の300倍以上高速な計測が可能」(同社)となっている。同社によると、同レベルの高速な計測が可能な従来の方式に比べ、専有面積を約70%削減することができるという。
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