東京大学と東北大学の研究グループは、金属らせん磁性体におけるらせんの巻く向きを、電流と磁場を用いて制御することに成功した。磁気メモリなどへの応用が期待される。
東京大学大学院総合文化研究科の大学院生である蒋男氏と東北大学金属材料研究所の小野瀬佳文教授らによる研究グループは2020年3月、金属らせん磁性体におけるらせんの巻く向きを、電流と磁場を用いて制御することに成功したと発表した。磁気メモリなどへの応用が期待される。
磁気モーメント(磁性の強さとその向きを表すベクトル量)が、らせん状に整列しているらせん磁性体は、らせんの巻く向きに「右回り」と「左回り」の自由度がある。この向きを制御する方法が多くで研究されてきた。巻き方の自由度は、定常状態からの乱れにも強く、磁気モーメントが一方向にそろった強磁性体の一部では、磁気メモリへの応用が始まっているという。
既に、「逆ジャロシンスキー守谷機構」と呼ばれるメカニズムにより、絶縁体のらせん磁性体では、らせんの巻く向きを電場によって制御できることが分かっていた。ところが、電場のかからない金属で、らせん磁気構造の巻く向きをどのように制御できるかどうかは、十分に解明されていなかったという。
そこで研究グループは、らせん磁気構造において、電流を流した時に発生する磁気モーメントに作用する回転力(スピントランスファートルク)の効果に着目し、実験を行った。
具体的には、集束イオンビームを用いてミクロンオーダーに加工した金属らせん磁性体「MnP単結晶」に、大きな磁場と電流を「平行」あるいは「反平行」に加えたのち、磁場の大きさを弱めてらせん秩序化させた。その後、らせんの巻く向きを抵抗率の二次高周波で測定した。この結果、電流と磁場が、「平行」か「反平行」かによって、巻き方は変わることが分かった。
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