ToFデバイスの特長は、リアルタイムに3次元で距離を測定できることにある。この特長を生かし、人体の動き(ジェスチャー)を把握する入力デバイスとして実用化された。最初の実用例は2014年に発売されたビデオゲーム機である。2016年には高級自動車のジェスチャー入力デバイスとして商用化された。またスマートフォンでは、顔認証用デバイスとして一部の機種で実用化されている。
また車載用では、車室内の乗員検知用としてToFデバイスの市場が急激に拡大すると期待されている。その大きな理由は、「シートベルトリマインダー」に関する保安基準が改正されることだ。2020年9月1日以降に発売される新型自動車は、改正された保安基準が適用される。
「シートベルトリマインダー」とは、シートベルトが装着されていない場合に、そのことを警報として運転者に伝える機能である。現行の保安基準では、乗車定員が10人未満の乗用車と小型貨物車、軽貨物車の運転席だけを対象としている。イグニッションをオンにしたときは警報表示が点灯し、走行中には警報表示が点灯するとともに警報音が鳴る。
これが改正後には全ての自動車が対象となる。運転席と助手席および、これらと並列の座席について現行基準と同じ機能の「シートベルトリマインダー」を装備しなければならない。
また乗車定員が10人未満の乗用車と車両総重量が3.5トン以下の貨物車は、後部座席についても現行基準と同機能の「シートベルトリマインダー」を装備しなければならないという、さらに厳しい基準となっている。
従来、自動車の乗員検知には加圧センサー(荷重センサー)が主に使われてきた。加圧センサーを座席に配置することによって乗員の着席を検知する。加圧センサーはシステムが簡素で、誤り率が低いという特長を有する。ただし、座席に荷物を置くと誤って乗員と判定してしまうという欠点を抱える。
ToFデバイスは3次元の物体形状を検出するので、乗員と荷物を区別できるという特長がある。ただし要求される短い応答時間を確保するためには、安価なLEDではなく高価なVCSELを光源としなければならない。VCSELのコスト低減が求められる。
(次回に続く)
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