この不等式の発表から8年後、この確率に基づく量子論が「大嫌い」で、量子論を「否定してやりたい」という野望に燃える、若き大学院生、ジョン・クラウザーさんが、この実験方法と実験装置を真面目に考え出し、ついにその装置を完成させてしまいます*)。
*)この辺、「夏休みの宿題が終わらないので、学校に放火する小学生」とか、「レポートが書けないので、担当教官を殺害しようとした大学生(著者のブログ)」とかの話を思い出させます。
ところが実験結果を見てみて茫然自失 ―― なんと、ベルの不等式は「破れていた」のです。
で、それから、出るは出るわ、ベルの不等式、”破れまくり”の実験結果が、世界中で報告されます。
さらに、現時点で最も有名な実験、アラン・アスペさんによる「アスペの実験」で、ベルの不等式の拡張版であるCHSH不等式でも、破れていることを確認し、さらには、2015年に、東京大学のチームの実験によって、完膚なきまでに、量子の非局所性を証明して、「アンシュタインさんの敗北」を決定づけた、と言われています*)。
*)と、EE Times Japanの記事にありましたので、私は、「忖度(そんたく)」……もとい、「信じて」います(量子の非局所性の厳密検証に成功――新方式の量子コンピュータにも道)。
*)編集担当M:そんた……信じて頂きまして、ありがとうございます。
今や、「量子の非局所性」を疑っている量子研究者は(ほとんど)いません ―― 私も、今となっては疑ってはいませんが、「気持ち悪!」という感情は、捨てきれていません。
『要するに、これって、2つの量子の”共依存”だよなぁ。パートナーの稼ぎに依存する”ヒモ”みたいだなぁ』と。私には、タバコを吸いながらパチンコをして、日がなブラブラしている「量子」が見える(考え過ぎ)ようで、なんとなく不快な気分です(完全な誤解と偏見)。
とはいえ、この「量子の非局所性」は、実験的量子コンピュータで、既に使われているのです。
この「量子の非局所性」こそが、現在の古典コンピュータが、どんなにスケールアップしようとも、どんなに高速化しようとも、どんなに巨額の費用を投じようとも、絶対に実現できない機能 ―― 「量子もつれ」なのです。
以上、CNOTなどの2量子ビットゲートを説明するための、「量子もつれ」に関する簡単な説明は、ここまでにさせていただきたいと思います。
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