図5は今回報告2機種で採用されているDimensity 1000+とDimensity 820のそれぞれをチップ開封した様子である。チップ面積の比率で掲載した。廉価版のDimensity 820は2回りほど小さいので、1枚のウエハーから取得できるチップ数も多く、ローコストとなっている。ともにTSMCの7nmで製造されているので、トランジスタのパフォーマンスはほぼ同じだ。機能の差が、そのまま面積の差になっている。
この2チップを比較すると、低コスト化のために機能をダウンさせていることが明確になっている。図5の上部中央は、顕微鏡で拡大したシリコン上の年号やメーカー型名などの拡大写真である。ともに2019年の年号が搭載されているので、2019年に設計されたものだ。その後、試作や評価を経て、2020年に量産に至っている。つまり、2つのプラットフォームは同時期に並行して開発されたものだと思われる。電源ICやトランシーバーも同時に開発されているので、MediaTekの開発力は極めて高いことも読み取っておくべきだろう。
図6は、先行してReno 3 5Gに採用されたDimensity 1000Lの開封と、iQOO Z1に採用されたDimensity 1000+の比較である。チップサイズ、外観、さらにシリコン上の年号やメーカー型名までが完全に一致するものであった!
半導体ICの場合、できばえにはバラつきがあって、ベスト側では周波数が速く、ワースト側では若干遅くなる(相反して電力性能は前者が悪い傾向にある)。テスト工程で速度の遅いものを“L”(LiteやLowの意味)で活用し、速度の速いものを”Plus”や”Pro”として扱うことはどのメーカーでも行っていることだ。
Dimensity 1000+/1000Lのシリコンは開封解析の結果、同じものであることが明確になった。しかし、性能は上記のようにできばえの差があり、異なるものである。同じシリコンを、ネーミングを変えて、見せ方を変えて活用することは、理にかなった合理的な展開である。
5G時代の2年目に突入した今、多くのプラットフォームが出そろいつつある。最も重要なのは、5G通信の普及がさらに加速するであろう3年目以降の“次の一手”だろう。恐らく、1万円台の5Gスマートフォンも登場するのではないか。そのときどのような構成、どのようなプロセッサになるかが注目すべきポイントだ。
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