日本テキサス・インスツルメンツは2.2MHzの高速スイッチングゲートドライバや保護回路を集積した車載用650V耐圧GaN(窒化ガリウム)FET(電界効果トランジスタ)製品を発表した。
Texas Instruments(TI)の日本法人である日本テキサス・インスツルメンツは2020年11月10日、新製品として車載用650V耐圧GaN(窒化ガリウム)FET(電界効果トランジスタ)製品を発表した。2.2MHzの高速スイッチングゲートドライバや保護回路を集積しており、電力密度の倍増や99%の電力変換効率を実現し、既存のSiやSiC(炭化ケイ素)ソリューションと比べ電力用磁気部品のサイズを59%削減できるという。同社は600V耐圧の産業用製品も同時に発表した。
今回発表した新製品の最大の特長となるのが、600Vや650V耐圧のGaN FETとともにSiの高速スイッチングゲートドライバおよび保護回路、能動的な電力管理機能を高密度で集積している点だ。
Texas Instrumentsの高電圧パワー部門GaN製品マネジャー、Steve Tom氏は、「この集積のメリットは、パフォーマンスが最高レベルであること、そしてディスクリート製品と比べ密度が倍増しているという点だ」と説明する。
新製品では高密度の集積によって高い効率と電力密度を実現しつつ、150V/ナノ秒以上、2.2MHz以上と「業界最速のスイッチング速度」を実現。SiやSiCの既存ソリューションと比べ電力用磁気部品を59%削減でき、ディスクリート構成より10個以上の部品削減が可能という。新製品はいずれもオン抵抗が30mΩで、ハーフブリッジ回路で使用した場合、最大4kWの電力変換が可能だ。
従来のGaNデバイスでは、スイッチング速度の高速化と、それに伴って増加する電力損失とのトレードオフが必要だったが、同社は、今回の新製品で独自の理想ダイオードモードによって電力損失を低減したという。例えば、力率改善回路(PFC)では、ディスクリートのGaNやSiC MOSFETと比較し、第3象限損失を最大66%低減するとしている。同時に、理想ダイオードモードは適応デッドタイムが不要なことから、ファームウェアの簡素化や開発期間の短縮も実現している。
さらに、パッケージについても、同様の競合製品と比べ熱インピーダンスを23%低減したうえ、パッケージの上面または下面からの放熱を選択できるといい、「あらゆるアプリケーションの放熱設計に最大限の柔軟性を提供する」と説明。製品の信頼性も、専用のGaN製品のテストラボを有し、4000万時間以上のテストや5GWh以上の電力変換アプリケーションテストを実施、「あらゆる市場で長い製品寿命期間にわたって高信頼性を提供している」と強調している。
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