新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2020年11月18日、次期米国大統領であるJoe Biden氏が掲げる技術イノベーション政策などに関する情報を整理、分析した短信レポートを公表。同日、東京都内で記者説明会を開催した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2020年11月18日、次期米国大統領であるJoe Biden氏が掲げる技術イノベーションおよび気候変動政策に関する情報を整理、分析した短信レポートを公表。同日、東京都内で記者説明会を開催した。
米国第46代大統領となるJoe Biden氏は現大統領のDonald Trump氏とは大きく異なる政策を公約に掲げている。今回、NEDOはさまざまな分野で発信されている客観的な情報を整理、分析し、Biden氏の技術イノベーション政策および気候変動政策について、短信レポートとしてまとめた。
Biden氏は、技術イノベーション政策として、"Innovate in America"(米国でのイノベーション)をスローガンに、全50州にわたる連邦政府の研究開発への大規模な投資を実施し、数百万人の雇用を創出、「最も重要で競争力のある新産業と技術において世界のリーダーシップを確保する」としている。
NEDO技術戦略研究センター海外技術情報ユニットのユニット長の森田健太郎氏は、このスローガンについて、「直訳すれば『米国でイノベーションを起こせ』という命令形になる、かなり強い言葉。国内でイノベーションを起こすのだ、という指向性が非常に強いスローガンだ」と説明。また、Trump氏とBiden氏の公約の比較から、「Biden氏が大統領に選出された場合の方が、技術イノベーション政策は強化されることが分かっている」とも語った。
具体的にBiden氏は公約で、研究開発費を現在の予算から、4年間で3000億米ドル増額することを提案している。対象分野は、先端材料、健康/医療、バイオテクノロジー、クリーンエネルギー、自動車、航空宇宙、人工知能、テレコミュニケーションなどの分野で、「雇用を創出することができる国産産業を重視する」としている(なお、あくまで公約ベースであり、予算の満額が議会で承認されるかは別の議論となる)
研究開発計画における予算強化分野として挙げているのは、下図の5つだが、森田氏は、「一言でいえば、『より政府直轄型になる』とみている」と説明する。特長的なのが、国立衛生研究所や国立科学財団、エネルギー省など主たる研究機関への「連邦政府による直接的なR&D支出」の大幅な増加や、大学への「ピアレビュー型の科学研究グラント」そして、米国の競争力を支えるキーとなる技術に直接投資を行うための「新ブレークスルー技術R&Dプログラム」の実施などだ。
技術イノベーション施策を進めるBiden氏の方針に関しては、同氏がObama政権副大統領時の外交政策顧問Jake Sullivan氏が代弁した内容などから、「現政権と同様、国内で技術イノベーションが活発化することを重視する。そのため最先端技術の保護、育成については、現政権から大きくは変わらないとみられる」と説明。
ただし、Biden氏は特定国と対峙するだけではなく、貿易のルールづくりで米国が主導権を再び握るため関係国と結束していく必要性も同時に強調しており、NEDOは、「先端技術やイノベーションを巡るルール作りについても、日本、オーストラリア、韓国といった同盟国との関係をより一層強化する可能性がある」と分析している。
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