GSMAは、多様な導入シナリオの実現に向け、TCOについて調査することを決定したのである。FWA(固定無線アクセス)に焦点を当てた3つのシナリオを用意して、1つは中国の都市部を模倣し、もう1つは米国の仮想都市を、そして3つ目は一般的な企業のオフィス環境を模倣したという。
また2つのシナリオの中で、中国と欧州の人口密度の高い都市環境における屋外導入について調査を行った。
研究グループは、最も重要な需給率について考慮したモデルを使用している。そのカテゴリーは、「特定地域における加入者の分布と密度」「セル間に必要とされるサイト間の距離」「5Gネットワークを同時に使用して頻繁にデータをダウンロードする可能性がある予測ユーザー数」の3つに分類されている。
これらのシナリオは全て、2021〜2025年に導入される見込みだ。
Casstels氏によると、今回の研究結果は、業界のあらゆる分野に影響を与えるという。
「今回の研究成果は、通信事業者にとって最も重要だといえる。通信事業者たちは、『ミリ波は、市場向けに準備を整え、適切な環境において実行可能であり、コスト効率も高い』ということを確信する必要があるからだ。また、短期的な利益の確保を確信できなければ、適切な導入タイミングを選べないため、長期的に大きな不利益を被るというリスクを負うことになる」(同氏)
またベンダーに関しては、今回の研究から得られた重要な結論として、ミリ波ソリューションによって明らかに規模の拡大が可能になるということが挙げられる。ただし、ここで重要なのは、トラフィックの成長が拡大する可能性があるという点だ。
「単価を下げる必要があるため、ベンダーが急激な成長を遂げ、さまざまな種類のデバイスに対する需要が増加する。そして、再び導入コストが低下する。これは、わずかながらも間違いなく好循環だといえる」
人口密度の高い都市部の場合、3.5GHz帯+ミリ波の環境では、調査対象となった両方の地域において、5Gサービス向けのダウンロード速度が少なくとも100Mbpsに達し、3.5GHz帯のみの場合と比較すると、非常にコスト効率が高いという。また研究結果に関しては、特に影響を受けやすい要素として、トラフィック需要の強さや、特定地域における通信事業者のシェア、通信事業者が各周波数帯で割り当てられている帯域の量などが挙げられる。
同様に、5G FWAのシナリオでは、3.5GHz帯+ミリ波の環境でのコストは、3.5GHz帯のみの場合よりも低くなると考えられるが、これはミリ波の帯域が高いデータ容量に対応できるのに対し、3.5GHz帯はカバレッジ拡大のために使用されているからだ。
レポートには「電波の受信感度を分析したところ、3.5GHz帯+ミリ波の方が、コスト削減量が大きい可能性があることを示している。ベースラインの感度分析では、3.5GHz帯のみのネットワークと比較して、中国の都市部では16%、欧州郊外では15%、米国の農村部では27%のコスト削減が可能であることを示している」と記載されている。
屋内オフィスのシナリオでは、3.5GHz帯+ミリ波の公共ネットワークを使う場合、最大54%のコスト削減が可能であることが示唆されている。
ネットワークの展開では収益も考慮しなくてはならないが、5Gの普及が進む中、GSMAのような業界団体が、(5Gでの肝とされる)ミリ波技術を展開するための経済的な正当性を提示することは、歓迎すべきである。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.