科学技術振興機構(JST)は、東京大学大学院工学系研究科の一木隆範教授が行った研究を基に、カンケンテクノが受託開発した「減圧プラズマによる高効率除害装置」について、その成果を認定した。開発した排ガス除害装置を用いると、ICなどを製造する工程で用いられるさまざまな危険ガスを効率よく無害化できるという。
科学技術振興機構(JST)は2021年3月、東京大学大学院工学系研究科の一木隆範教授が行った研究を基に、カンケンテクノが受託開発した「減圧プラズマによる高効率除害装置」について、その成果を認定した。開発した排ガス除害装置を用いると、ICなどを製造する工程で用いられるさまざまな危険ガスを効率よく無害化できるという。
ICやフラットパネルディスプレイ、太陽電池などの製造工程では、シランガス(SiH4)や水素ガスといった毒性や可燃性のある危険なガスが用いられている。これらの危険ガスを無害化する方法として、現在は1000℃以上に加熱して分解する熱酸化反応などが用いられているという。
また、シランガスは爆発を防ぐために大量の窒化ガスで希釈して一定の濃度に下げるなど、事前処理を行ったうえで高温処理する必要があった。排ガス処理で消費されるエネルギーの多くは、この排ガス加熱に使われているという。
今回は、爆発下限界が可燃性ガスの圧力に依存することに注目し、排ガス除害装置の省エネルギー化に取り組んだ。具体的には、希釈するガスの量を削減できる圧力条件を検討した。そして、IC製造装置などのポンプ出口と排ガス処理装置をつなぐ配管内を、真空ポンプにより10kパスカル程度まで減圧。配管内におけるガスの爆発下限界を引き上げることで、化学反応を起こさない環境を作り出した。
さらに、排ガス分散の熱源となるアークプラズマも、従来の大気圧ではなく0.1〜10kパスカルの減圧状態でも安定して発生できる条件を見いだした。これにより、減圧状態の排ガス処理装置内で、アークプラズマ熱源を用い危険ガスを酸素と熱反応させて無害化処理を行うことに成功した。また、無害化処理で発生する副生成物が、反応炉内壁に付着するのを防ぐため、水洗浄の仕組みを設けた。
シランガスを用いるCVD工程ではこれまで、大量の窒素ガスを用いてシランガスを希釈していた。今回の装置を用いると希釈用の窒素ガスが不要になる。このため、シランガス処理では必要なエネルギーを最大約75%も削減できるという。
開発した減圧除害装置は、処理条件を変えることによって、窒素ガスによる希釈を必要とするシランガス以外の可燃性ガスにも、装置構成を変えずに適用できるという。一例として、シリコンウエハーの水素処理装置やエピタキシャル成長装置、有機膜のアッシング装置など水素を使用する製造装置などへの応用を挙げた。試作した減圧除害装置の外形寸法は1350×900mm、高さは1860mmである。
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