Myung‐Hee Na氏は講演で、電源/接地配線を基板側に埋め込む技術(BPR:Buried Power Rails)の採用とFinFETのフィン数を減らすことで5トラック(5T)の基本セルを実現できることを示した。基本セルの断面構造は前回を参照されたい。
BPRを導入すると、基本セルの構造は従来よりもはるかに複雑になる。トランジスタの上にレイアウトされた電源/接地の配線群(PDN:Power Delivery Network)から、BPRに電源を供給しなければならないからだ。具体的にはPDNの配線群とBPRを結ぶため、垂直方向にビアや電極層などが連なる細長い柱のような構造を形成する。この構造を形成するプロセスは、トランジスタの製造工程(FEOL)に追加される。また基本セルのシリコン面積を増加させる。
このためBPRの影響は基本セルではなく、回路ブロックで検証する必要があるとする。実際に6トラック(6T)の回路ブロックと5トラック(5T)の回路ブロックで検証してみせた。6TはFinFETの基本セル、5Tはナノシート(NS)FETとBPRの基本セルである。
BPRを導入することによって、電源/接地配線による電圧降下は約40%減と大幅に小さくなった。BPRは配線を細くしても高さを確保できるので、配線の断面積を大きくしやすい。すなわち電気抵抗を低くできる。BPRの低い抵抗が、電圧降下の低減(電源電圧の安定化)に大きく寄与した。
さらに、電源供給配線群(PDN)を最適化することで、回路ブロックのシリコン面積を約14%減と小さくできた(トランジスタの縮小と配線トラック数の減少によるシリコン面積の削減分は除く)。
(次回に続く)
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