新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによるグラフィックチップ市場の需要急増は、季節的な要因、サプライチェーンの不安定、はびこる臆測によって、ジェットコースターのごとく落下して突如終結する可能性がある。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによるグラフィックチップ市場の需要急増は、季節的な要因、サプライチェーンの不安定、はびこる臆測によって、ジェットコースターのごとく落下して突如終結する可能性がある。
そのような不安定さは、PC向けアドインボード(AIB)の搭載率にも及んでおり、2020年のPCブームが持続不可能であることを示唆している。
アナリストのJon Peddie氏は「半導体サプライヤーは過剰反応に引き込まれるおそれがある。また、何億人もの新規ユーザーが突如現れて、需要は今後も高いままであると考えていることも危険である。それは現実ではないだけでなく、真実でもない。そうした需要はどこから来ているというのか?」と述べた。
Peddie氏は、グラフィックチップ市場は早ければ2021年末には表面上いくらか正常に戻ると予測している。2018年にも今回と似た好不況の循環が起きNVIDIAのような市場リーダーが過剰在庫の責任を負わされることとなった。Peddie氏は、GPUベンダーがそのような過ちを繰り返すことを懸念している。
Peddie氏はインタビューの中で、GPUサプライヤーは「新たな消費者を一人も創出していない」と述べた。あらゆるリモートオフィスに新しいPCが装備されたことから、新たな成長の余地はほとんどないと付け加えた。
Peddie氏の言葉によれば、PCを基盤とするGPU市場は2021年第1四半期に、出荷数が1億1900万個でピークに達し、対前年比で38.74%という並外れた伸びを示した。グラフィック市場が落ち着いた場合、2025年までの年平均成長率は2.87%というまずまずの数値になるとPeddie氏は予測している。
一方で同氏はGPUベンダーに対し、目を覚ますよう警告している。
もう一つの重要な要素は、グラフィックAIBの潜在的かつ実体のない需要だ。Peddie氏は「供給はゼロになり、価格は最高値になっている」と述べ、ブロックチェーンに追加された認証済みの取引をいくつも完了した見返りに暗号通貨を得た“採掘者(crypto miner)”を非難した。複雑なハッシュ関数を解いて暗号通貨を得るチャンスは、「ネットワークの総合的なマイニング力」に比例することが多いとPeddie氏は説明した。
Peddie氏は、現在のグラフィック需要は“人工的である”と結論付けている。現在、グラフィックス分野ではNVIDIAが引き続き優位に立っており、その市場シェアは前四半期に比べて0.62%増加した。一方、AMDの市場シェアは0.12%減少し、Intelは0.5%減少している。
AIBの出荷台数は、前四半期比で7.1%増加し、前年同期比で24.4%増加した。ボードの出荷額は、2021年の最初の3カ月間で合計125億米ドル以上に達している。
テクノロジー市場が平時の水準を模索する中、2020年におけるグラフィックス市場の大幅な成長は、近い将来、需給の厳しい現実に取って代わられる可能性が高い。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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