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自動運転レベルのスペックは行き詰まりか?「レベル分け」が生んだ誤解(3/3 ページ)

» 2021年07月12日 11時30分 公開
[Colin BarndenEE Times]
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Waymoの事故から分かる「見過ごされてきた」ケース

 2021年2月、Waymoは米国カリフォルニア州サンフランシスコを含むテストの拡大を発表した。それに伴うブログ記事の中で、同社は次のように述べている。

 「市内の移動を困難にしている要因を挙げてもらったところ、回答者の63%が危険なドライバー、74%が駐車場、57%がストレスの多い通勤時間を挙げた。問題は、約4分の1の人がサンフランシスコの道路はまったく安全ではないと感じていることだ」

 その後すぐ、Waymoのテスト車両がスクーターに乗った歩行者と衝突しており、サンフランシスコ市民の不安は解消されなかっただろう。Waymoは声明の中で、「自律走行の専門家は、車両が交差点に入り左折したとき、自律走行モードを解除して手動モードで走行していた。その後、車両は手動モードのままで電動スクーターに乗った人と接触した」と述べている。

 同社のテスト車両には、ほぼ全ての民間乗用車よりも多くのセンサーとプロセッサが搭載されていたのに、マニュアル(人間が運転する)モードでは、スクーターとの衝突を防ぐ衝突回避技術が不十分だったというのだ。

 サンフランシスコ市民は現在、どれほど不安を感じているのだろうか。

 歩行者を検知できる自動緊急ブレーキ支援(AEB Vulnerable Road User:AEB-VRU)は、数年前から欧州の新車評価プログラム(Euro NCAP)で規定されている。しかし、今回のサンフランシスコの事故は、Waymoが現行のEuro NCAP基準を上回るどころか、過去のEuro NCAP基準すら満たさないマニュアルモード用の衝突回避技術を搭載したテスト車両を公道に配備していることを示唆している。

 なぜ、米国NHTSA(国家道路交通安全局)は、テストレベルの自動運転車がマニュアルモードで公道を走行する際のAEB性能の最低基準を定めたガイドラインを発表していないのだろうか。また、人間のドライバーの注意力低下や疲労を評価するDMSの最低性能基準を定めたガイドラインがないのはなぜだろうか?

 これらの2つは、明らかに安全性に関わるケースだが、見過ごされてきた。

 2021年6月29日、NHTSAが自動車メーカーや事業者に対し、自動運転システムおよびレベル2のADAS(先進運転支援システム)搭載車に関する衝突事故の報告を命じる事故報告命令を発付したことで、規制環境が大きく変化した。

 これを皮切りに、自動運転車の試験、開発に関する規制環境が大きく変化することが予想される。議員たちは、自動運転車業界の約束事に疑問を呈する一方で、Consumer ReportsやCenter for Auto Safetyなどの消費者安全擁護団体の意見にも耳を傾け、AEB、DMS、車線逸脱警報システムなど、実績のある車両安全技術の義務化を推進している。

 DMSの主な役割は、人間のドライバーの注意力を維持することだ。AEBと車線維持システムは、それぞれ縦方向のスピードアシストと横方向の車線維持を行う。これらの実証済みの車両安全技術は、レベル3、4、5の自動運転よりも、今後数十年の間に多くの人命を救うことになるだろう。

 J3016の仕様は、よく知られており、広く参照されているが、結局のところ、それほど役に立っていないのかもしれない。

【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

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