Microchip Technologyは、欧州委員会(EC)コンソーシアムのメンバーであるClean Skyとの協業により、航空宇宙用途に向けたSiC(炭化ケイ素)ベースのパワーモジュール製品ファミリー「BL1/BL2/BL3」を開発した。
航空宇宙システムにおける排出ガス削減を巡って競争が繰り広げられる中、設計エンジニアたちは、制御システムに搭載されるエレクトロニクス製品のさらなる効率化実現に向けた取り組みを進めている。オンボードオルタネーターや、アクチュエーター、補助電源装置に至るまで、あらゆる空気力学/水力学の置き換えを実現したい考えだ。
Microchip Technology(以下、Microchip)は、欧州委員会(EC)コンソーシアムのメンバーであるClean Skyとの協業により、航空宇宙用途に向けたSiC(炭化ケイ素)ベースのパワーモジュール製品ファミリー「BL1/BL2/BL3」を開発した。電力変換およびエンジン駆動システムの高効率化と小型化を実現するという。このモジュールは、1200VのSiC-MOSFETと1600Vのダイオードを、過酷な航空用途向けに設計された改良基板上で組み合わせている。また、Trench 4 FastシリコンIGBTと組み合わせて利用することも可能だ。
Microchipのインテグレーテッドパワーソリューション部門担当シニアマネジャーを務めるMike Innab氏は、米国EE Timesのインタビューの中で、「航空宇宙用途向けパワーコンバーターの分野における重要なけん引要素は、サイズと重量、コストである。航空分野では、小型軽量化によって効率的な飛行を実現することが、長期的なコスト削減につながる。この他にも、競争が激しい航空業界では、初期コストが非常に重要だ。さらに、製品の信頼性と堅牢性を長期的に確保することも極めて重要である」と述べている。
航空分野は現在、大規模で重量が大きく、維持費も高額な空気力学/水力学システムを、もっと小型で維持費も少なくて済むシステムに置き換えようとしているところだ。Innab氏は、「電気機械システムは、空気力学/水力学システムと比べて全体的な運用コストがはるかに少ない。最新の航空機は現在、大量のパワーエレクトロニクスを搭載しているため、小型軽量の高効率なパワーシステムに対する需要が増加し、必要性が高まる一方だ。それを実現できるのが、SiC半導体である」と述べる。
Microchipは、欧州の規制当局によって設定された、「2050年までに気候中立(climate neutral)を達成可能な航空を実現する」という排出規制に準拠すべく、同社のSiCパワー半導体技術を統合することによって、製品ファミリーのAC-DCおよびDC-ACの電力変換/生成効率の大幅な向上実現を目指していくとしている。
SiCは、部品の軽量化によって、エネルギー消費量とガス排出量を確実に削減できるだけでなく、小型軽量デバイスの所定の電圧や定格電流などの電力密度も高めることが可能だ。
SiCチップは、既存のシリコンと比べて切り替え速度が高いため、小型パッケージの電力効率を向上させることができる。さらに、損失を低減し、熱の発生も抑えることが可能だ。このような物理的特性は、重要な航空要件の1つである小型フォームファクタの、パワーエレクトロニクス用途向けとして適しているといえる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.