Innab氏は、「スイッチング周波数の向上と熱損失の低減により、受動素子のサイズを小さくし、冷却の必要性を低減することで、電力変換システムの大幅な小型軽量化が可能になる。電力変換システムで使われているエネルギー貯蔵装置(キャパシター)や磁性部品(トランスやインダクター)は、スイッチング周波数の増加にほぼ比例して小型軽量化を実現されるため、SiCを使用することでスイッチング周波数を一段と高め、電力変換システムのさらなる小型軽量化が可能になる」と語っている。
SiCスイッチング速度が向上すれば、電流と電圧がそれぞれの極間で遷移するサイクルを最小化することができるため、電力損失が減少する。このような損失が多い状態の時間が短縮されれば、全体的な電力損失を削減できるだけでなく、システム冷却要件の緩和にもつながる。
Innab氏は、「SiCは、航空業界ではまだ新しい技術と見なされている。航空業界は、耐久性と長期的な信頼性に対する予測可能性を重要視する他、『特定の新技術は、十分な発展を遂げるまでに時間がかかる』という信条を持っているため、新技術の導入に時間を要する場合が多い」と述べている。
Microchipは、「今回性能向上を実現した基板は、金属基板が不要なため、100W〜10kWの範囲内で動作する既存のパワーエレクトロニクスと比べて、40%の軽量化が可能だ」と主張する。
BL1/BL2/BL3デバイスは、米連邦航空局(FAA)が策定した機械的、環境的ガイドラインに準拠している。同製品シリーズは、SiC-MOSFETやショットキーバリアダイオード(SBD)、IGBTを採用している。薄型かつ低インダクタンスのフォームファクタを実現し、コネクターをPCB(プリント配線板)に直接接続することによって、開発時間の短縮と、システム信頼性の全体的な向上を実現する。またこのレイアウトにより、並列接続や三相ブリッジも可能なため、電力変換器とインバーターのさらなる高性能化も達成する。
Innab氏は、「SBDは、高電圧を絶縁するために採用している。また、SiCパワーデバイスはワイドバンドギャップ(WBG)デバイスであるため、シリコンよりも高い電圧で優れた堅牢性を実現することができる」と説明する。
モジュールは、75Aおよび145AのSiC-MOSFETの他、50AのIGBT、90Aの整流ダイオード出力がある。BL1/BL2/BL3モジュールは、位相レッグやフルブリッジ、非対称ブリッジ、昇圧、降圧、デュアルコモンソースなど、複数のトポロジーオプションを用意している。
パワーエレクトロニクス市場は現在も、一般的なシリコンに頼っているが、電力需要の増大に伴い、新しいSiC設計が登場するようになった。SiCは、シリコンの10倍の絶縁耐力を実現するため、デバイスをより高い電圧で動作させることが可能だ。また、充電インフラやスマートグリッドの他、最近では航空分野に至るまで、幅広いターゲット市場に向けた要件にも対応することができる。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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