Synapticsは、5億3800億米ドルの現金でDSP Groupを買収することを発表した。それにより、自社のモノのインターネット(IoT)関連のポートフォリオに音声制御/音声インタフェースを追加する。
HMI(Human Machine Interface)向けのハードおよびソフトを手掛ける米Synapticsは、5億3800億米ドルの現金で米DSP Groupを買収することを発表した。それにより、自社のIoT(モノのインターネット)関連のポートフォリオに音声制御/音声インタフェースを追加する。買収は2021年末に完了する見込みだ。
Synapticsは今回の買収理由として、クラス最高の音声、視覚AI(人工知能)能力を単一のポートフォリオに統合すること、また、超低エネルギー(ULE)で実現するセキュリティアプリケーションによって自社の無線関連のポートフォリオを強化することを挙げている。DSP Groupは、Synapticsが「Internet of Audio Things(IoAT)」と呼ぶ領域において、複数の市場にわたり確固たる地位を築いている。DSP Groupは、低消費電力の「SmartVoice」、統合型の通信とコラボレーション、無線IoTデバイスで大きな成長の機会を持っているとする。そうしたソリューションの大半は、Synapticsの既存の顧客基盤と関連しているため、ポートフォリオに含まれたデバイスの抱き合わせ販売が可能になる。
Synapticsのプレジデント兼CEOであるMichael Hurlston氏は買収発表に際し、「DSP GroupのSmartVoiceならびにULE無線ソリューションにおける専門知識と、Synapticsの遠距離音声認識ならびにIoT向け Wi-Fi/Bluetoothコンボを組み合わせれば、統合された顧客基盤に対して、さらに差別化されたソリューションを提供できるようになる。また、エッジネットワークにおけるAIで実現するデバイスへの移行をリードする位置に着くことができる」と述べた。
Synapticsは最近、低消費電力のエッジAIに関するイニシアチブを発表した。ABI researchはTinyML(マイコンなど安価なデバイスでエッジ推論を行うこと)向けの販売台数が2030年には25億個に達すると予測しているが、このイニシアチブはそうした大きな長期的機会を開くものである。DSP GroupのSmartVoice製品がSynapticsのスマートビジョンプラットフォーム「Katana」に加わることで、既存の顧客ニーズを満たしながら将来的な市場機会に対処できるポートフォリオが生み出される。また、そうした組み合わせによってSynapticsの無線通信ポートフォリオは強化される。フル装備のインテリジェントなホームセキュリティソリューションを実現する「DECT ULE」が加わるからだ。
DSP GroupのCEOであるOfer Elyakim氏は、今回の買収について「当社の補完的なポートフォリオと世界的なエンジニアリングチームが組み合わされば、DSP Groupのコア技術を既存顧客の製品ポートフォリオへ広げる機会がもたらされる」と述べた。
IoT事業はSynapticの成長戦略の重要な部分だ。そのため、低電力のエッジAIで統合型の視覚/音声領域へと多角化することは、同社の製品力にとってプラスになるのは明らかだ。Synapticsは、DSP Groupの買収を発表するスライドの中で、低電力の遠距離音声認識からスマートホーム、スマートリテール、工業生産の他、農業、運送、公共事業といった領域まで幅広いアプリケーションに向けた低電力エッジAIでは、同社が入り込むことが可能な20億米ドル規模の市場があると主張している。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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