英国の市場調査会社IDTechEXは、EVのバッテリー駆動のパワートレインによって車両に搭載される半導体は2倍以上に増えることから、「2021年の半導体需要は74億米ドル増加する」と予想している。しかし、クラウドコンピューティングやスマートフォンなど、パンデミックによって需要の拡大した他の分野と競合するため、ほとんどの自動車メーカーは減産を余儀なくされている。
2021年の電気自動車(EV)の販売台数は500万台に達する見込みで、半導体は供給不足が続く中、さらに需要が高まっている。
英国の市場調査会社IDTechEXは、EVのバッテリー駆動のパワートレインによって車両に搭載される半導体は2倍以上に増えることから、「2021年の半導体需要は74億米ドル増加する」と予想している。しかし、クラウドコンピューティングやスマートフォンなど、パンデミックによって需要の拡大した他の分野と競合するため、ほとんどの自動車メーカーは減産を余儀なくされている。
衰える気配のない半導体需要と、ファウンドリーが増産できないことで、EVの主要コンポーネントの納品はさらに遅れている。IDTechExはその一例として、マイクロコントローラーのリードタイムが44週間に延びていることを挙げている。
幸い、EVのパワートレインの約3分の1を構成するパワーエレクトロニクスの供給状況はそれほどひっ迫していないように見える。
半導体不足が続く中、EVメーカーの対応はまちまちだ。Fordは2021年9月27日、EVとバッテリーの生産に114億米ドルを投資すると発表した。同社は同4月に、ICの供給停止によって2021年の販売台数を約110万台減らすと発表している。
トヨタ自動車は、ハイブリッド車から全電動モデルへの移行を目指しており、パンデミックの初期に半導体の供給不足を乗り越えるためにサプライチェーンを強化したにもかかわらず、車両生産を減らしている。
一方、EVのトップメーカーであるTeslaは、新しいマイコンの設計と代替サプライヤー確保によって、半導体不足をほぼ乗り切ったという。
さらに、中国の小型“シティーカー”から、高級セダンやSUVまで、ニッチ(特定分野)をターゲットにした新興のEVメーカーが増えている。中国のシティーカーをターゲットとするメーカーは販売台数の拡大を目指しており、現在の半導体不足に拍車を掛けている。高級セダンやSUVのメーカーは、小規模だが収益性の高いステータスシンボル市場を対象としている。
このうちの1社が、中国とサウジアラビアの投資家の支援を受ける米Lucid Groupだ。同社は2021年9月28日、米国アリゾナ州の“先進的な生産工場”で「Lucid Air」セダンの生産を開始すると発表した。既に1万3000台以上の受注があり、2021年10月に納品を開始するとしている。同社は、「Lucid Airは、112kWhのバッテリーパックの1回の充電で520マイル(約840km)を走行できる」と主張している。
こうした事例から、市場調査会社各社は、自動車メーカーが供給の変化という課題に対処しているため、EV市場は継続的に成長すると予測している。IDTechExは、Fordは2021年第2四半期をICサプライチェーンの混乱の“谷”と見ていると指摘し、こうした見解を支持している。しかし、2022年に徐々に改善していくかどうかは、ファウンドリーの生産能力拡大よりもホームオフィス分野のチップ需要の減少に大きく左右される、と分析している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.