半導体不足に関しては、関心のほとんどが自動車分野に向けられているが、他の産業やデジタル分野も同様に、ICサプライチェーンの混乱によって大きな打撃を受けている。
半導体不足に関しては、関心のほとんどが自動車分野に向けられているが、他の産業やデジタル分野も同様に、ICサプライチェーンの混乱によって大きな打撃を受けている。
ソフトウェアベンダーのQt Groupが委託しForrester Consulting(以下、Forrester)が実施した製造業者を対象とした調査によると、半導体不足の影響を最も受けているのは、産業機械および電気機器分野だという。次いで影響が大きいのはITハードウェアおよびコンピュータ分野で、製品開発の遅れの割合が最も高くなっている。
組み込み機器およびコネクテッド製品の開発を手掛ける262社の企業を対象に2021年3月に実施されたこの調査では、産業機械および電気機器メーカーの60%がICサプライチェーンの確保に注力していることが明らかになった。一方、サーバおよびコンピュータメーカーの55%が、半導体供給の維持に苦労しているという。
半導体不足によって、自動車メーカーはここ数週間、生産ラインの停止を余儀なくされている。それでも、Forresterの調査では、自動車分野はICサプライチェーンの確保の注力度合いで中レベルにランキングされている。
今回の調査では、製造業者の3分の2近くが、「半導体の供給停止によって新しいデジタル製品の提供が頓挫した」と回答している。その結果、製品の市場投入が7カ月以上も遅れた事例もあった。
Forresterの報告書によると、「企業は現在、半導体の十分な供給を確保することにより注力している」という。従って、調査回答者の半数が、「2021年は、半導体および主要ハードウェアコンポーネントの十分な供給を確保することがより重要になっている」と回答している。
大きな打撃を受けたサーバおよびコンピュータメーカーのうち71%が、「半導体不足によって製品開発が遅れている」と回答している。これは、クラウドコンピューティングやストレージなどのデータセンターサービスの需要が、リモートワーカー向けのストリーミングビデオアプリケーションの需要とともに急増しているためである。
Forresterは、現在の半導体不足を乗り切るために、同社が「クロスプラットフォームフレームワーク」と呼ぶ手法を活用してその影響を抑えることを提言している。これは、より多様な半導体をサポートする柔軟なソフトウェアツールなどの一時的な対策を指し、それによって「重大なサプライチェーン不足の影響を軽減することができる」とForresterは結んでいる。
Forresterによると、調査対象の10人のエグゼクティブのうち8人が、「半導体パイプラインの混乱に対処するために、複数のクラスのハードウェアをサポートするクロスデバイスツールとフレームワークに投資している」と回答したという。
こうしたアプローチは、新製品のより迅速な販売を可能にするとともに、サプライチェーンの柔軟性を高め、複数の製品設計に追われることの多いソフトウェア開発者の負担を軽減することができるとして推奨されている。
フィンランドQtのようなソフトウェアベンダーは、2021年後半まで続くと予想されるチップ不足に製品開発者が対処する方法として、クロスプラットフォームのソフトウェアライブラリなどのツールを推進している。同社の製品管理担当シニアバイスプレジデントであるMarko Kaasila氏は、「現在、世界のテクノロジーの開発と製造は危機的な状況にある」とコメントした。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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