今回は、東芝のHDD事業の業績を取り上げる。2021会計年度第2四半期(2021年7月〜9月期)の業績を中心に紹介する。
ハードディスク装置(HDD)の開発・製造企業が3社に寡占化していることは、ストレージ業界では良く知られている。3社とはSeagate Technology(以降はSeagateと表記)とWestern Digital(以降はWDと表記)、東芝のことだ。3社の市場占有率はおおよそ以下のようになる。Seagateが40〜45%、WDが35〜40%、東芝が15〜25%である。
東芝のHDD製品はクライアント向け、コンシューマー向け、エンタープライズ向け、クラウド向けと幅広い。そして2.5インチ型HDDと3.5インチ型HDDの両方を扱う。
東芝のHDD事業が現在のような形になったのは、2009年に富士通のHDD事業を買収してからだ。買収前は東芝の主力HDD製品はクライアント/コンシューマー向けであり、エンタープライズ向けは扱っていなかった。一方、富士通の主力HDD製品はエンタープライズ向けである。東芝は富士通のHDD事業を買収したことで、総合HDDベンダーとなることができた。そして3番手ながらも、HDD大手3社の一角を占めている。
東芝は、事業分野(東芝は「ソリューション」と呼称)別に企業を有しており、HDD事業は「デバイス&ストレージソリューション」に属する。事業担当企業は「東芝デバイス&ストレージ株式会社」である。
デバイス&ストレージソリューションは、大きく2つの事業に分かれている。1つは半導体事業、もう1つがHDD事業(一部に部品材料、メモリ転売を含む)である。2020会計年度(2021年3月期)の売上高は半導体事業が3133億円、HDD事業が3980億円となっている。
東芝は2021年11月12日に、2021会計年度第2四半期(2021年7月〜9月期)の決算説明会を開催した。東芝は累計期間ベースで四半期の業績を公表しており、「第2四半期(2021年7月〜9月期)」とは実際には「上半期(2021年4月〜9月期)」を意味する。
2021会計年度上半期(2021年4月〜9月期)のHDD事業は売上高が前年同期比47%増の2595億円である。海外生産拠点の稼働率が回復したことと、データセンター向け大容量品の販売増が、売り上げを押し上げた。営業利益は120億円で、前年同期の5億円から大幅に増加した。
またさかのぼると、2021会計年度第1四半期(2021年4月〜6月期)のHDD事業は売上高が前年同期比89%増の1226億円、2020会計年度第4四半期(2021年1月〜3月期)のHDD事業は売上高が前年同期比37%増の1052億円となっており、売上高が急速に回復していることが分かる。ちなみに単純計算(上半期から第1四半期を差し引いたもの)による2021会計年度第2四半期(2021年7月〜9月期)の売上高は、前年同期比22%増の1369億円である。
売上高は4四半期連続で前年同期を上回り、2四半期連続で前の四半期から増加した。回復基調が鮮明になりつつある。
(次回に続く)
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