2021年は、半導体不足や、輸送用コンテナの価格高騰、輸送コストの上昇などが原因で、ブラックフライデーの超特価品の価格が異常に跳ね上がり、テレビの平均価格が上昇するという、極めて異例の年だった。これを受けてCES 2022では、テレビが興味深い変化を遂げたといえる。テレビメーカー各社がCESで発表した新型モデルには、最先端技術の適用により、高画質や鮮やかな色彩、迫力あるサウンドなど、数々の機能が搭載されている。
これはメーカー各社が毎年言っていることと同じだが、2022年は少し様子が異なる。Samsung Electronicsが、テレビの新時代到来を提案したからだ。同社はCESのオフサイトで、次なる目玉として最新のQD(量子ドット)-OLED TV技術を披露し、ビデオ業界の観測筋から称賛を得ている。Samsungによると、この量子ドットディスプレイテレビは、RGB OLEDのコントラストレベルと、量子ドットの色彩/輝度との組み合わせを実現したという。
筆者は今のところ、OLEDを超えるテレビ画像を見たことがないため、CES 2023ではさらに多くのQD-OLEDが登場することを期待している。最新技術に関するスケジュールはまだ何もないようだが、発売時の価格はかなり高額になるだろう。
筆者は、SamsungがCESのプレイベントで行われた基調講演において、「間もなくSamsung製テレビで非代替性トークン(NFT:Non-Fungible Token)を購入できるようになる」と発表したのを聞いて、冗談を言っているのではないかと戸惑った。しかし同社は実際に、NFTを購入する前にプレビューすることができるというプラットフォームを発表したのだ。同社は、「2022年に発表予定のこのプラットフォームでは、NFTとそのブロックチェーンメタデータを誰が作成したのかといった履歴を把握することが可能だ。スマートキャリブレーション技術により、画像をクリエーターの既定値に調整することで、視聴するためのものとして見ることが可能になる」と述べる。
Samsungのプラットフォーム上でNFTを購入できる上に、Spirits Network経由でテキーラを購入することも可能となれば、何らかのトラブルが発生する可能性がある。おそらくSamsungは、今後大人たちに向けて支出管理の方法を提案する必要があるだろう。
またSamsungは、新しい製品カテゴリーとして、ポータブルプロジェクター「Freestyle」も発表している。重さは830gで、どんな場所でも映画のような視聴体験を提供することができるという。丸型のFreestyleは、音声アシスタント機能を搭載、「Alexa」とSamsungの「Bixby」の両方に対応するなど、スマートスピーカーとしても2倍の性能を実現する。販売価格は899米ドル。トラック照明のような形状で、裕福なミレニアル代やZ世代をターゲットとする。
これは単なるプロジェクターではない。「ポータブルスクリーン」だ。
SamsungのCEO(最高経営責任者)であるJong-Hee Han氏は、基調講演で、バッテリーの低損失化やエネルギー使用量減など、持続可能性の取り組みに関して多くの時間を費やした。筆者はテレビや「Roku」のリモコンからアルカリ電池を交換するたびにぞっとしているので、Samsungが太陽電池で充電できるリモコン「SolarCell Remote」の導入を進め続けていることをうれしく思っている。
2021年、Samsungは、交換可能な電池の代替として、自然光または室内光によって充電できるSolarCell Remoteの能力を宣伝した。同社によると、毎年約150億個の電池が廃棄され、そのうちリサイクルされるのはわずか2%ということから、これは決して小さなことではない。2022年のSolarCell Remoteはさらに進化し、RF充電を追加した。ドラマに夢中になっている間、リモコンは2.4GHzのWi-Fiルーターの電波を受け、それをエネルギーに変えていくのだ。
これは、単4電池の無駄を省くための素晴らしい動きだといえる。しかし、筆者が電話に出るために番組を一時停止しようとしたとき、あるいはドラマの音量を上げようとしたとき、充電式リモコンの電池が切れていたら、大変なことになりそうな予感もする。
電源の残量を簡単に確認できる方法が欲しい。BOSEのワイヤレスヘッドフォンは、電源を入れるたびに電池の残量を教えてくれるので、とても重宝している。SolarCell Remoteのバッテリー残量を調べる方法について、Samsungは、ホームを押して、「設定」「一般」「電源と省エネ」「利用可能なリモートバッテリー」の順に移動するよう、ユーザーに指示している。
わざわざそこまでの作業をするより、十分な残量があると祈っておくだけの方がいいだろう。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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